市場の中、各種あるクラウドサービスで、シェア1位はAWS(アマゾン ウェブ サービス)で32%。2位のMicrosoft Azureはシェア19%。3位はGoogle Cloudがシェア7%で続く。
世界で最も包括的に、広く採用されているクラウドサービス、AWS。その「デジタルイノベーション・リード」であり、世界のアマゾンで数十人しかいないといわれる「CX Bar Raiser(アマゾン社内に対して、顧客視点の新鮮なインサイトを提供するために認定された社員)」でもあるのが松本肇子氏だ。松本氏は金融業界各社を対象に「デジタルイノベーション プログラム・ワークショップ」を実施、アマゾンのイノベーション・フレームワークを用いたDX導入をリードしている。
2000年のアマゾン ジャパン立ち上げメンバーでもある松本氏に、そのミッションやアマゾンが推進するビジネスコンセプト、「顧客起点で考えること」について聞いた。
「デジタルイノベーション・リード」としてのミッション
デジタルイノベーション・リードの役回りは、顧客の課題解決をAWSのサービスを使って支援することです。その上でも重要なミッションは、アマゾンが推進するイノベーションのコアメカニズム、「Working backwards(顧客中心に考える)」のコンセプトを顧客に伝え、顧客が「自分で(自社の)顧客を中心に考える」ようになるまでのプロセスを支援していくことです。
そのためのフレームワークとして、「お客様は誰か」「課題は何か」「どんなベネフィット/顧客体験を届けられるか」を、顧客とともに考えます。提供者(われわれ)視点を捨て、徹底して「お客様視点」で取り組んでもらうのです。
大事にしているのは、最初に「顧客が将来喜んでいる姿を想像し」、そこを起点に逆算をして、今自分たちができることを考えていくことです。
「『DX推進室』を作った、だからDXでなにかやりたい」はNG
サービスやモノを開発してマーケティングする際、ついつい提供者起点で、「自分たちの技術やリソースを活かしたい」や、「DXやAIで何か始めたい」と考えることはないでしょうか。
実はそれは、「顧客のWantから離れた、誰にも訴求できない自社満足のモノやサービス」につながる危険な思考モデルです。「私」や「私のもっている道具」を主語にするのではなく、「お客様」を主語にして提供できるバリューを考えるべきなのです。
たとえば、アマゾン社内のディスカッションで、「デジタル」という言葉を耳にすることはほぼありません。なぜなら、デジタル化やDX、AIは「手段」にすぎないからです。われわれがどんな「手段」を使ってお客様のために働いているかは、できあがるサービスの受け手であるお客様には関係がないのです。
「最初に『顧客が将来喜んでいる姿を想像し』、そこを起点に逆算をして、今自分たちができることを考えていく」