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2022.02.11 07:30

「位置情報」で小売業を変えるスタートアップRadarの実力

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Getty Images

消費者や規制当局が企業によるデータの収集に神経を尖らせる中、ロケーションデータを用いて、ブランドと消費者のつながりを強化するスタートアップが新たな資金調達を実施した。

ジオフェンシング技術を用いて企業が顧客の居場所を特定することを支援する「Radar」は、2月8日、Insight Partnersが主導したシリーズCで5500万ドル(約64億円)を調達したと発表した。ブルックリンに拠点を置く同社の評価額は3億6500万ドルに達しており、今回の調達には既存出資元のAccel、Two Sigma、Heavybitらも参加した。

フォースクエアの元社員らが2016年に立ち上げたRaderは、これまで累計8000万ドル以上を調達している。同社は、許可を与えた特定のブランドのみとデータを共有すると述べている。

Radarはここ最近、パンデミックを受けて普及した非接触型のデリバリーや、モバイル決済、ピックアップなどの分野にロケーションデータを提供することで業績を伸ばしている。同社は昨年、ソフトウェア開発キットやダッシュボードを開発するエンジニアを大量に採用し、事業規模を拡大しようとしている。

「プライバシーに関するリスクが高まる中で、位置情報を利用する場合には、ユーザーから同意を得ることと、本当に価値のあるエクスペリエンスを構築することが重要になっている」と、同社の共同創業者でCEOのニック・パトリックは述べている。

Radarの顧客企業としては、“スターバックスの強敵”と呼ばれるピーツコーヒー(Peet’s Coffee)やアメリカンイーグル、Tモバイルなどが挙げられる。これらの企業は、同社のソフトウェアを、カーブサイドピックアップやロケーションベースのマーケティングに用いている。

2021年5月にRadar社との提携を開始した大手ベーカリーチェーンの「パネラブレッド」は、ジオフェンシング機能を活用して、顧客が店舗に居るのか自宅に居るのかを把握してプッシュ通知を送るなどのプロモーションを行っている。

パネラ社のチーフデジタルオフィサーのジョージ・ハンソンによると、同社の売上の半分以上をオンライン注文が占めており、アプリは同社のトップの注文チャネルだという。また、昨年は約450万人がアプリをダウンロードしており、位置情報は事業に欠かせないデータになったという。

Insight Partnersのマット・ガットーは、「Radarのテクノロジーは、消費者のエクスペリエンスを向上させる」と述べている。「ウェンディーズの前を通りかかった消費者に、マクドナルドが割引クーポンをSMSで送るような事例は以前からあったが、Radarのツールは、デリバリーやペイメントなど様々なユースケースに対応できる」と彼は付け加えた。

編集=上田裕資

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