逮捕されたのはイリヤ・リキテンスタイン(34)と妻のヘザー・モーガン(31)。暗号資産の大手交換所「ビットフィネックス」へのハッキング後、盗み出された11万9754ビットコインの洗浄で共謀した疑いがもたれている。
司法省によると、事件当時、ハッカーが不正取引を2000回以上行い、盗んだビットコインをリキテンスタインが管理するデジタルウォレットに移していた。発表文ではこのハッカーの身元は明示されていない。
その後、リキテンスタインとモーガンは偽名でのオンライン口座開設やコンピュータープログラムによる取引自動化など「数々の高度な洗浄技法」を駆使して、5年間でおよそ2万5000ビットコインをこのウォレットから自分たちの管理する複数の金融口座に移動させていたという。
裁判所の捜索令状を得た特別捜査官らがふたりのオンライン口座を調べ、盗まれた9万4000ビットコイン、時価36億ドル超相当が保管されているデジタルウォレットへのアクセスに必要なプライベートキー(秘密鍵)のあるファイルを見つけた。
リサ・モナコ司法副長官は今回の摘発について「暗号通貨(仮想通貨)は犯罪者の安全な隠れ場所ではない」ということを証明したものだと強調。マシュー・グレイブズ連邦検事は、暗号通貨やその取引所は米国の金融システムの一部になっているとしたうえで、複雑なマネーロンダリングスキームを駆使した窃盗は「暗号通貨に対する信頼を損ないかねない」と指摘した。
リキテンスタインとモーガンはマネーロンダリングの共謀罪のほか、米国に対する詐欺行為の共謀罪で訴追された。前者では最長20年、後者では最長5年の禁錮刑に処される可能性がある。
ジョー・バイデン大統領は早ければ今月にも、暗号資産を国家安全保障にかかわる問題として連邦機関に規制させる大統領令を出す見通しとなっている。