チェンは18歳だった2018年、平昌冬季五輪に男子シングルの金メダル有力候補として参加。しかしショートプログラムでは失敗し17位となり、その後盛り返したもののメダルには届かず5位に終わった。これは、団体で獲得した銅メダルでも癒やせない大きな落胆を生んだ。
22歳になり北京冬季五輪に戻ったチェンは、フィギュアスケート界での圧倒的な存在感を取り戻している。そして、ブランド各社もそれに賭けている。
フォーブスの推定によると、チェンは今回の五輪前の12カ月間で、後援企業から保証支払い金として少なくとも100万ドル(約1億2000万円)を稼いでいる。
チェンはまた、氷上の格別の演技によりブランドパートナー企業から追加でボーナスを稼いだ可能性が高く、北京冬季五輪のシングルで金メダルを獲得すればおそらく収入を倍にできるだろう。金メダルを獲得すれば、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)から約3万7500ドル(約430万円)も支払われる。
それでもチェンは、世界の高収入アスリートには全く届かない。フォーブスの推定によると、フィギュアスケート界の元スターであるキム・ヨナは、2014年に約1600万ドル(約18億円)を稼いでいた。
しかし、母国の韓国で著名セレブであるキムは例外だ。断片的なマーケティング環境で1万ドル(約120万円)のマーケティング契約を得ることさえ難しい冬季五輪の基準で見れば、チェンは勝者に近い。
サウスカロライナ大学のジョン・グレーディー教授(スポーツ法学)は「ネーサン・チェンのブランドアピールは高い」と述べている。「(ブランドは)小規模なスポーツの中で、まだ試されていない、あるいは知名度が低い選手に機会を与えることを必ずしも好まない」(グレーディー)
チェンは11社と長期契約を交わしていて、その多くはブリジストンやコムキャスト、ナイキ、トヨタ、ビザなど米国チームの公式スポンサーでもある。チェンはまた、グラブハブやエアウィーヴなどの消費者ブランドとも提携し、ゲーム開発企業「nWay」を通じた新たなNFTの発表にも関与している。