高梨沙羅選手だけじゃない。メイクは「自分で自分を整える」手段

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「スポーツ選手は休む間も惜しんでがむしゃらに練習し、倒れるまでやるのが美徳」と思っている人もいるかもしれない。しかし、スポーツも仕事も、良い“オフ”があることで“オン”の効率が上がり、さらに高い能力を発揮できる。これは経験がある方も多いのではないだろうか。

筆者自身、講演や緊張する打ち合わせなどのある日はもちろん、自宅で作業をする日でも、思考をクリアにしておく必要がある日は例え人に会うことは一切無くてもメイクをする。これは、自宅にいながら重要なオンライン会議の際にはスーツを着る、といったことと似ている。その一連の作業を通じて、心が冷静になり、“readyな状態”になるのだ。

だから、この高梨選手におけるメイク、広い意味で“身だしなみを整えること”は、今自分が力を発揮する必要のあるたった一つのことに、迷いなく全力で向かうことができるために有効、あるいは欠かせない方法といえる。

目指すのは「大丈夫な自分」を保つこと


企業トップと仕事をする際、筆者は決まって最初にクライアントに言うことがある。「安心してください、私はお洒落の話はしません」というものだ。お洒落に見えたり、垢抜けて見えたりするのは結果論。目指すのは、大丈夫な自分を保つ、そのための方法を身につけていただくこと。攻めるための姿を作り出しているように思われがちだが、基本は危機管理的な考え方だ。

なぜなら、その人たちの中には筆者が火をつけずとも、燃えるような“戦う力”が十分にあるから。それが無理なく全面に出るよう、不要な要素を取り外し、大事なエネルギーを無駄に消耗させないようにする。

その中でもメイクやグルーミングは、服とは違いクライアントが自分で自分の顔を見て何かに気づく大事な時間だ。自分を自分で“手当て”する手法なのだ。

アスリートにおいて、フィジカルだけでなく、メンタルがいかに重要か。昨年の大坂なおみ選手の一件で共感した人も多かっただけに、今回の批判には驚いた。

それと同時に、メイクを感覚的なものとしてだけでなく、もっと科学的側面を元にして、スポーツやビジネスの分野に導入する方法を掘り下げなくてならないと、筆者自身の今後の大きな課題を得た気がしている。

文=日野江都子

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