宇宙ゴミ関連の訴訟が急増する
宇宙空間で衝突が発生した場合、その法的責任を問う手続きは1967年に成立した宇宙条約(Outer Space Treaty)と1972年の宇宙損害責任条約(Space Liability Convention)に基づいて行われることになるが、この条約に基づく賠償請求は過去に1件しかないという。
1978年にソ連の人工衛星「コスモス954」が大気圏で爆発し、放射性物質を含んだデブリがカナダ北部にばら撒かれた。カナダ政府はソ連に損害賠償を請求し、最終的に300万カナダドル(現在の米ドル換算で1000万ドル近く)という金額で両政府は決着した。
スペースXがこのような訴訟に直面する可能性は低いが、この種の損害賠償請求は将来的に増えていくはずだと、Hogan Lovellsのカウフマン弁護士は述べている。
なぜなら、軌道に投入される人工衛星はどんどん増えており、それらが有用でなくなれば、宇宙ゴミになる可能性が高いからだ。そのため、各国政府はデブリの取り締まりに乗り出し、規制機関にルールの策定を要求している。
また、世界の主要な宇宙機関のほとんどが、1993年に設立された「宇宙デブリ調整委員会(IADC:Inter-Agency Space Debris Coordination Committee)」に参加し、この問題に取り組んでいる。さらに、NASAがアルテミス計画で有人月着陸を目指す中、NASAと協力する各国政府は、宇宙ゴミを軽減するための条項を含む条約の「アルテミス協定」に署名している。