スペースXの宇宙ゴミが来月「月に衝突」へ、その法的責任は?

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現在、月の裏側に密かに住んでいる人たちが居たとしたら、彼らは3月初旬にSF映画「ドント・ルック・アップ」で描かれたような状況に直面することになる。スペースXのロケットの残骸が時速5700マイルで月面に衝突するからだ。

この衝突により、月面に直径19メートルのクレーターが出来ると予測されており、ソーシャルメディア上では、怒りと辛辣なコメントが相次いでいる。スペースXは、自分たちが作った宇宙ゴミが月に衝突したことに対して責任を問われないのだろうか?

「彼らが責任を問われることは、理論的にはあり得るが、現実問題としてはあり得ない」と、法律事務所Hogan Lovellsで衛星関連の業務を担当するスティーブン・カウフマン弁護士は話す。

なぜなら、宇宙船の事故による損害賠償をカバーする国際条約や法律がある一方で、何らかの法的訴訟を起こすためには、実際に損害が発生しなければならないからだ。「月にロケットが墜落しても、月は誰のものでもない」とカウフマンは説明した。

今から約7年前、イーロン・マスクのスペースXは、NASAの深宇宙気候観測衛星を軌道に乗せた。ファルコン9ロケットの上段は、そのミッションの終了後に地球の周りの不安定な軌道に転落し、宇宙空間を漂っていた。

そして今、深宇宙探査のソフトウェアエンジニアであるビル・グレイの計算により、ロケットのデブリ(残骸)が3月4日頃に月に衝突することが明らかになった。

NASAは、科学的な目的などのために、複数の宇宙船を意図的に月面に衝突させたことがある。しかし、宇宙船が意図せずに月面に衝突するのは今回が初めてだ。スペースXはこの衝突に対して法的責任を負うのだろうか?

例えば、彼らのロケットが中国の月探査機に衝突した場合、理論的には月面で賠償請求が発生する可能性がある。中国は、自国の月探査機に生じた損害を米国に請求することになるだろう。

しかし、それが具体的にどのような法的プロセスになるかは不明だ。「これは前例がない事態だ」と、Hogan Lovellsの別の弁護士は述べた。
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編集=上田裕資

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