世界はデータに溺れている。金融市場のように取引するには?

取引情報が、データ共有とアクセスを解放へ。(Yuichiro Chino / Getty Images)


第四次産業革命ノルウェーセンターも、DCPIと協力し、同センターの船舶排出量追跡イニシアチブをさらに発展させ、気候関連対策としてその知見を活用することに取り組んでいます。また世界経済フォーラムはData Marketplace Service Provider(DMSP)をデータ取引市場の主要な運営者および管理者の候補として提案しています。

ここで注目に値するのは、データの資産としての特異性です。データは他のデータとの組み合わせや再結合を通して価値を獲得し、その都度異なったインサイトを生み出すことができるため、独自の価値を持つことになります。従来の金融資産やそのオルタナティブ資産にはこのような特徴は備わっていません。

データはコピーできるが、株式はコピーできない


では、データ取引市場とニューヨーク証券取引所・ナスダックのような金融市場との間にはどのような共通点と相違点とがあるのでしょうか。その答えを探るために、まずはデータ取引市場に関する規制から立ち上げまであらゆる面から考えみたいと思います。

仮に、あなたがある会社の株式を持っていて、それを売ろうとしたとします。取引が完了すると、その株式はあなたのものではなく、別の人だけのものになります。一方でデータの場合は状況が異なります。データはコピーが可能なので、自分が使うためにデータを保持しながら、売ったり譲ったりすることができます。つまり、データは多くの「所有者」が同時に使用することができるのです。

そのため、データ取引には株式や債券の取引とは異なる課題が生まれます。金融市場(証券取引所)では、誰が何を所有しているかを管理し、その商品に対する排他的所有権が重視されます。一方で、データ取引所は無限にコピー可能な資産の仲介者として信頼性を重視するため、データが本物であるか、また、最初に収集されてから破損または改ざんされていないかといった点が注目されます。

データ利用のための信頼できるプラットフォームになるために、データ取引所は強力な認証プロトコルやブロックチェーンベースの追跡・検証ツールなどを通じて、改ざん防止策を組み込む必要があります。つまり金融市場と同じように、信頼(トラスト)がプラットフォームを最適に機能させるための基盤となるのです。

このように信頼のおけるプラットフォームが構築・強化されることでデータの売り手と買い手の双方が参加しやすくなります。これは市場の流動性が高まることに繋がり、取引のボラティリティーも低下します。そしてこれが更なるプラットフォームへの参加を促し、さらに流動性が高まるという好循環につながり、取引がよりスムーズになるという流れを生みます。
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