サプライチェーンの脆弱性が明るみに出たのは、新型コロナウイルスのパンデミックが初めてではない。前回は 2008年の金融危機に端を発する経済低迷期(資産価値のグレート・メルトダウン)であり、この時は数年にわたって続いた。当時の問題は、港湾の機能停止ではなく、サプライヤーにおける財務の不安定化だった。
パンデミックが3年目に突入した今、国内および近隣諸国のサプライヤーからの調達が、ますますトレンドになりつつある。
そして、焦点は輸送距離の短縮だけではない。これからのキーワードはコラボレーションだ。サプライヤーとのパートナーシップを構築し、透明性を確保してきた企業は、危機が訪れた際に、信頼関係という強みを発揮できる。つまり、コストだけを基準に選んだ「地球の裏側のどこか」で、原材料が立ち往生する事態を避けることができる。
具体的な影響のある例を挙げよう。プライベートレーベルの調達は、小売企業幹部にとって重要な問題になりつつある。プライベートレーベル専門のコンサルタント企業デイモン(Daymon)でプレジデントを務めるマイケル・テイラー(Michael Taylor)は、ウォール・ストリート・ジャーナルのウェブサイトに掲載されたコラムのなかで、米国小売企業を対象として自社がおこなった調査結果に触れつつ、こう述べている。
「サプライヤーと長期的関係を築いている企業こそが、長期的にみて競争で優位に立つ。このことは、流通が滞っている時にも当てはまる」
サプライチェーンの問題については、誰もが対処を試みているが、解決はまだまだ先になりそうだ。筆者が創業した調査会社ファースト・インサイトが最近、サプライチェーンの混乱について小売企業幹部を対象におこなった調査の結果は、このことを裏付けるものだった。
大手コンサルのマッキンゼーも、議論ばかりが先行し、行動が伴っていないと指摘する。マッキンゼーは2020年、世界各国のさまざまな業界のサプライチェーン担当幹部を対象とした調査を実施した。その結果、93%の企業が「サプライチェーンの柔軟性、機動性、レジリエンスを高める」意思があると回答した。しかし同社の報告によれば、1年後の追跡調査で「構造改革に着手していたのは、わずか15%だった」という。