3日でできることは3日で忘れる 郷ひろみに学ぶ生き方のヒント

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取捨選択の「捨」が重要になる


郷さんには、若い頃から目標にしたものを手に入れるための、自分なりの人生のロジックもありました。

「犠牲を払わないといけないということです。僕は“ギブ・アンド・ゲット”と、いつも言います。ギブというのは、何かを得るために自分が注ぎ込む時間やお金、労力のことです」

例えば、鍛えられた身体を獲得しようと思ったら、まず運動しなければいけない。汗をかかないといけない。

「最初はとてもきついですよ。でも、自分の肉体なり、情熱や時間なりを注ぎ込んだその後に、注ぎ込んだ分だけ鍛えられた身体を手に入れられる。それが“ゲット”なんです」

注ぎ込んだ時間が短ければ、手に入れられるものは小さくなります。情熱が大きければ、手に入れられるものは大きくなります。つまり、目標が大きければ大きいほど、それだけのことをしなければいけなくなるということです。

「3日でできるものは、3日で忘れると思うんですよ。ゴルフでもそうですけど、30分のレッスンで『つかんだぞ!』と感じることなんて、30分後にはきれいに忘れますから(笑)。1カ月でできたものは1カ月で忘れる。3カ月も1年も同じ。でも、不思議と3年やると、やめようというレベルではなくなるんです」

そして郷さんが目標にしたものを手に入れるためのロジックとして、もうひとつ重要視していることがあります。それは、「取捨選択をする」ということです。3年続けるためには、取捨選択が必要になるのです。とりわけ取捨選択の「捨」が重要になるというのです。

「やりたいことを全部なんて無理です。何を我慢し、捨てるのか。そこですよね。動ける身体をキープするために、夜更かしをしない、アルコールを控える、夜間にものを食べない、など『捨』が重要になる」

ただ目標をつくるのではなく、しっかり取捨選択をする。そして目標を手に入れるためには、「捨」を覚悟する。だからこそ、いまなお第一線で活躍できるだけの力が手に入れられているのです。

かつては毎年4月にファンクラブのイベントで全国をまわっていました。1人1人のファンと肩を組んでツーショットで写真を撮り、イベントが終わると全員と握手して見送る。その数、約1万人。1日7時間、休みなしでファンと会う日もありました。それを20年以上、続けていたのです。

「こんなことをやっている人はいないのかもしれない。でも、どれだけファンを喜ばせられるかというのが僕の仕事ですから。写真もプロのカメラマンに撮ってもらう。事前に背景と僕の衣装をファンの方に伝えておく。ファンもそれに合う衣装やメイクアップで来られます。すごく楽しい。もし、このツーショット写真に僕の容姿が堪えられなくなったら、僕はこの仕事をやめるでしょう」

しかしそれは、変化を恐れているということではありません。

「むしろ常に変わっていきたい。だって、時代はものすごい勢いでチェンジしています。その変化についていけなったら、異物感が生じて、“終わってる人”に見えちゃうと思うんです。それに変化の先にこそ進化があると信じているから。自分を進化させようと思ったら、まず変わる以外にないでしょう? 60代、70代、まだまだいろいろな郷ひろみを見せていきたいですね」

10代でデビューして、これほど長きにわたりアイドルとしてのキャリアを築き上げてきたのは、やはり理由があったのです。常に危機感を持ち、自分を磨き上げることにこだわり、変わることを恐れない。明確な目標を定め、周囲から求められていることを自覚して、自らをしっかりコントロールしていく。

人生100年時代。長きにわたる職業人生を充実させていくために、郷さんの生き方は大きなヒントを与えてくれます。

連載:上阪徹の名言百出
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文=上阪 徹

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