正装したハイパワーの肉体派。BMW iXの先取り感に目が離せない

BMW iX xDrive 50


走りはどうだ。とにかく静かで必要以上に速い。車重は2560kgもあるのに、重さとボディの大きさを感じさせない。Bレンジに入れると、どの走行モードを使っていても「ワンペダル」だけ運転できる。アクセルペダルの微妙な操作に慣れれば、完全停止に近い状態まで減速することが可能。つまり、ブレーキを踏まないで済むわけだ。

iXの乗り心地のよさと静粛性の高さが印象的で、アウディやメルセデスのSUVよりも静かで高級感を感じる。急加速しても、ビクともしないフロアの剛性感も非常にしっかりしている。コーナーに入っても路面を食いつくように走り、低重心のおかげでロールを抑えフラットな姿勢を保つ。制動力は素晴らしいけど、ブレーキペダルのタッチも敏感で少し慣れが必要だ。またタッチパネルではブレーキエネルギー回生の強さも選択可能である。

正面からのxDrive

「iX xDrive 50」には、フロントアクスルとリアアクスルにひとつずつの電気モーターを搭載し、4輪を駆動する(e-AWD)になっている。システム全体で523psの最高出力を発生し、0-100km/h加速はなんと4秒台という相当速いパフォーマンスを誇る。バッテリー容量は100kWhを超え、一充電での走行可能距離は600kmというけど、リアルワールドでは、500kmぐらいだろうか。それを聞いただけで、乗りたがる人が出てくるのでは? さて充電だが、150kWの急速充電がフル稼働すれば40分以内で約80%までの充電が可能。ただし、普通充電(家庭用など)では0から満充電にするための時間は10時間以上かかるという。

充電口の写真

最近のEVでは、室内に響かせる走行音もそのブランドのアイデンティティと言える。「アイコニック・サウンド」と称するiXの音は、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の音楽を担当したドイツ出身の作曲家ハンス・ジマーが手がけている。もちろん、そのサウンドは人工的な音だけど、変圧器のうなり音のような音作りだ。まだ、EVの世界に深く入れない僕から見ると、この音が気持ちの良い音と言えるか否かを判断するにはまだ早いかな。その結論はユーザーに任せよう。

ついにマイカーからEVに乗り換えようと考えている人にとって、iXはうってつけかもしれない。デザインの良さ、どのSUVに負けない加速感、完成度の高さ、しかも何よりもどのSUVより先を進んでいる感じがなかなか無視できない。唯一のネックは1400万円(フルオプション)かもしれない。

国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
「ライオンのひと吠え」
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文=ピーターライオン 写真=西川節子

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