同社のウェブサイトの登録会員数は、およそ16万人。2021年9月期の売上高は8100万ドル(約93億円)で、2019年同期から45%の増加となっている。
コッタの成功の鍵を握るのは、消費者をターゲットにしたデジタルメディア戦略だ。SNSのフォロワーは、インスタグラムで約54万人、フェイスブックで約26万人。合計100万人を超えている。
だが、同社はテクノロジーに詳しいZ世代が立ち上げた創業間もない企業というわけではない。前身は、1998年に大分県津久見市で設立されたタイセイだ。およそ5000の小規模の菓子メーカー向けに乾燥剤を販売していた同社の佐藤成一社長は、顧客が増えない理由はロット数が多いことにあると考え、少ない数で安価に販売する方針に転換した。
同社はその後、2006年に現在運営する消費者向けの通販サイト、コッタを創設。2010年には日本国内のコンビニエンスストアが個人向けに販売する質の高いスイーツに力を入れ始めたことから、菓子店は大きな打撃を受け、コッタも卸売販売の顧客の多くを失った。
だが、同社はすぐにサイトを通じた消費者向けの販売や作り方の紹介などを強化。こうした素早い転換が、2013年の東証マザーズへの上場にもつながった。
「かわいい」が呼び込む新たなユーザー
膨大な数に上るSNSのフォロワーたちがコッタに求めるのは「かわいさ」だ。幅広い層の消費者を引き付ける強力な、そしてどんな人にも対応可能な「かわいい」は、新規ユーザーの獲得に大いに役立つものだ(アニメのキャラクターやタレントから弁当箱まで、「かわいい」は日本社会において、特別な位置付けにある)。
ブロガーたちを有効に活用していることも、コッタの巧みなデジタル戦略のひとつだ。同社は常にサイトの魅力を高め、新たなレシピを紹介するため、影響力のあるブロガーたち100人以上からの情報を紹介。また、著名パティシエ30人が考案した1万7000以上のレシピを提供するなどしている。
また、コッタのウェブサイトはパン職人のコミュニティーとしても機能しており、レシピやQ&Aを共有できる場にもなっている。