ジャーナル「Political Institutions and Political Economy」に掲載された査読済みの論文によると、パンデミックが発生していなかった場合に推定された死者数と実際に報告された死者数の差を表す「超過死亡」の平均をみると、ポピュリズム政党が与党の国では18%近く増加していた一方、その他の国では約8%の増加となっていた。
論文の著者らは、ポピュリストは「社会を『人々』と『腐敗したエリート』に二分する」「政治的意思決定は、民意によって下されるべきものだと主張する」との定義に基づき、調査対象とした42カ国中、11カ国を「ポピュリストが与党の国」と特定した(米国、英国、ブラジル、インドなどが含まれる)。
論文によると、ポピュリスト政権には、パンデミックへの対応にあたって(感染拡大を抑制するための)長期的な政策を実施していない傾向がある。また、パンデミックの深刻さを軽視したり、科学への信頼性を傷つけたりするようなメッセージを発信している場合が多い。そのため、それらの国では人々が自ら進んで行動を制限する可能性が低くなっていると考えられる。
論文の著者で、ドイツのシンクタンク、キール世界経済研究所でポピュリズムについて研究するリサーチフェロー、マイケル・バイエルラインは、「ポピュリストの政府は、パンデミックが続くなかでの危機管理者としては最悪だ。避けることができたはずの数多くの死に、責任を負っている」と述べている。
右派ポピュリズムの今後は
新型コロナウイルスのパンデミックが発生する以前から、世界では右派ポピュリズムが台頭し始めていた。例えば、米国ではドナルド・トランプ大統領、ブラジルではジャイル・ボルソナロ大統領、英国ではボリス・ジョンソン首相が率いる政権が誕生している。
ただ、こうしたポピュリストの政治家たちは、パンデミックの間に多くの人々の支持を失ったとみられる。英ケンブリッジ大学の研究所(Centre for the Future of Democracy、CFD)が50万人以上を対象に実施、先ごろ発表した調査結果によれば、彼らに対する支持率は主に、「パンデミックに対する政府の誤った対応」「二極化の傾向が弱まったこと」「安定を望む人が増えたこと」によって低下したとみられている。