それにしても、ほぼ4カ月の間、日本は米国の検査免除を見逃していたのか。林芳正外相は1月25日の記者会見で「米側の措置の整合を確保する取り組みに不十分な点があったことは否定できず、真摯に受け止めたい」と述べた。「米国と日本の立場の違いを解消する取り組み」に問題があったという発言だ。日米には、地位協定に基づく日米合同委員会がある。主に、外務・防衛両省と駐日米国大使館・在日米軍の幹部らが出席し、在日米軍の運用を巡る問題を話し合う。会議の中身は非公表になっている。日米関係筋の1人は「(在日米軍の施設である)ニュー山王ホテルなどで、1カ月に1度、多いときには隔週ペースで開かれている」と語る。
別の関係筋によれば、米軍の出国前検査免除の話も取り上げられた。米側は新型コロナウイルス対策を巡る米国防総省の方針などを説明しただけで、「出国前検査の免除」と明言したわけではなかったという。それでも、米側は方針を説明したことにより、「日本側への通知は果たした」という態度だったという。これが、林外相が明らかにした「整合を確保する不十分な取り組み」の意味だった。日本側にしてみれば、「あんな不十分な内容では、説明したことにはあたらない」という状況だが、米側にしてみれば、「きちんと確認しない、日本側が悪い」ということだったらしい。
なぜ、こんな食い違いが生まれるのか。かつて日米地位協定を扱った米政府の元当局者は「米国と日本の間に、地位協定について認識のずれがあるからだ」と語る。1960年の日米安保条約改定に伴って成立した日米地位協定は、在日米軍基地の管理権を米軍が持つことや、米軍への課税免除、軍人、軍属らの刑事裁判権などについて定めている。元当局者は「海外に派遣される米軍関係者が、米国と全く同じ待遇を受けられるようにするのが、地位協定の最大の目的だ」と語る。