──親会社であるベクトルさんの利益追求ではなく、あくまでミッションに忠実にということですね。
支配株主が少数株主の利益を棄損することによって自己利益を最大化すれば、企業価値そのものを低下させることになります。
当然、資本の論理で株式のマジョリティを持つ株主の意向で経営体制が刷新されるということは起こりえます。ただ私たちは上場企業である以上、支配株主と少数株主で利益相反するような経営判断は決して行いません。
そもそも日本では経営者の自由裁量も業績に与える影響も小さいと言われていますが、それに甘んじているのは経営者自身です。どこまでも結果を出し続ければ、信認されると考えています。
配当政策に関しても、今の段階で株主へ分配するよりも、未来の成長に向けて投資を回して、中期的には株主だけでなく様々なステークホルダーの利益をすべてかなえようとしています。それがたとえ矛盾をはらんだ考えだとしても。
上場して3年半経って、誰でも当社株式を売買できるって素晴らしいなと改めて感じています。
事業を通じて社会に役立つだけでなく、株主価値向上を通じて公共の利益にも貢献できるわけです。持続的な成長を実現して、広く株主の利益に寄与できるように、中長期的な視点で株価や時価総額と向き合っています。
──最後に、PR TIMESの今後の目標をお聞かせください。
一言で言うと「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションの実現です。
事業をやればやるほど、PR TIMESのミッションは社会にとって重要なもので、それを実現するのは私の使命だと思うようになってきました。ニュースでも、事故や事件、スキャンダルといった情報に多くの人の時間が奪われています。
この「行動者」とは、決して有名な経営者や人気起業家のことを指しているわけではありません。むしろ、私たちが暮らす社会を実現する「名もなきヒーロー」がたくさんいて、そこにスポットライトを当てていきたいと思っているんです。
このPR TIMESという事業をこれからも成長させ、「名もなきヒーロー」の行動や想い、場合によっては今までの苦労や挫折といったものを多くの人に伝え、また次の行動者を生み出す社会を実現したい。「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションに社会を近づけることが私たちの社会的存在意義だと思っています。
※記事の内容は2020年2月25日時点のものです。
山口拓己(やまぐちたくみ)◎1974年生まれ 1996年4月、新卒で山一證券入社後、アビームコンサルティングなどを経て、2006年3月、ベクトルに入社。取締役CFOに就任し、上場準備責任者としてIPOへ向けて指揮を執る。2009年5月、PR TIMES代表取締役就任。2016年3月、東証マザーズ上場、2018年東証一部へ市場変更。