第一話:プレスリリース事業の役割を見つめ直した、3.11での出来事|PR TIMES 山口拓己 #1
──証券会社、コンサルなどを経てベクトルに入社され、現在に至っています。さまざまな経験が現在の経営に生きている部分はありますか?
私が最初に入社したのは山一證券で、営業を担当していました。
当時は「1丁目から5丁目まで飛び込み訪問して、何度でも営業し続ける」みたいなことを来る日も来る日もやっていました。
もちろん訪問したところで最初は断られるのですが、何度も訪問しているうちに「影響力の武器(ロバート・B・チャルディーニによる著書)」でいうところの「返報性の法則(相手から手助けなどを受けた際に、お返しをしなくてはいけないと感じる心理)」が働いて、話を聞いてもらえるようになり、やがて口座を開設していただける方が現れるようになったのです。
──PR TIMESを広める上でも、そのような経験が活きたのでしょうか?
実は、PR TIMESでは証券時代とはまったく逆の営業手法をとっています。
PR TIMESの創業当初はフリーミアムモデルを採用し、高機能を使用する場合にのみ3万円、月額契約の場合は8万円という形をとっていました。しかし基本無料なのに、お客様はまったく使ってくれなかった。
無料を理由に使う方のなかには、プレスリリースとしての要件を満たさないものもあり、それを許してしまった結果、媒体価値が上がらずサービス全体の質が落ちてしまいました。
そこで、フリーミアムモデルをやめて有料サービスに切り替えたのですが、PR TIMESでは証券時代のようなゴリゴリの営業手法は選択しませんでした。
理由は二つあります。
営業プロセスの一部をアウトソース
ひとつはド根性営業で事業を伸ばすと、利用価値が低いサービスを間違った顧客に売り込んでしまいやすいこと。もうひとつは、社員の内発的モチベーションを毀損しないためです。
アポイントを取るまでの営業プロセスをアウトソースし、社員は企画提案や関係構築の部分にフォーカスしました。サービスに自信があって、顧客のために役立ちたいと思っているなら、アポイントが取れさえすれば面会以降の工程は楽しいですからね。
自分たちが強みを発揮できることに集中して、他は思い切ってアウトソースすることでチームを少数精鋭に保つ。結果的に、東証一部に上場した今でも正社員は40人強しかいません。