中国は、感染者を完全になくすことを目指す「ゼロコロナ戦略」を掲げてきた数少ない国の一つだ。死者が出ていないということは、この戦略が有効であることを意味しているのだろうか?
中国の国家衛生健康委員会によると、新型コロナウイルス感染症による同国の死者数は、今年1月25日時点で4636人。その他の各国と同様、感染力が強まった変異株のデルタ株が1年近く前から流行し、国内の新規感染者数が1万6000人を超えていたことを考えれば、死者「ゼロ」という数は、驚くべきものといえる。
ゼロコロナ戦略で一定の成功を収めてきたニュージーランドでも、この1年には27人の死亡が報告された。やはり中国の死者「ゼロ」は、外れ値といえるだろう。人口10万人あたりの死者数は、中国は0.35人。同0.33人のブルンジ共和国を除けば、世界で最も死者が少ない国となる。
中国は人口の86.6%がワクチン接種を済ませており、世界で最も接種率が高い国の一つでもある。死者が出ないのは、このためとも考えられる。ただ、中国製ワクチンの有効性については、各国から疑問視する声があがっている。
一方、世界保健機関(WHO)のデータによれば、感染による中国の死者数は(2021年1月以降に確認された895人を含め)、5700人。だが、これには台湾と香港、マカオで報告された死者が含まれている。
中国政府への疑念
中国が公開するデータの信頼性には、パンデミック発生当初から疑念が持たれてきた。米中央情報局(CIA)は2020年4月、「中国は感染者数をかなり少なく公表している」と米政府に警告している。
また、英エコノミスト誌は、中国の超過死亡(過去のデータから推定される死者数と実際の死者数の差)はパンデミックの発生以降、およそ79万人にのぼるとの分析結果を伝えている。これは、中国が発表した4600人の150倍以上にあたる数値だ。