ソリューション
これらの解決方法は、動画です。シリコンバレーでは、投資家との初回ミーティングに代えて「ピッチデック+ピッチ動画で補足する」という方法を選ぶスタートアップが増えてきています。
日本でも最近になって、Zoomで初回ミーティングを行うことが広く受け入れられるようになりました。
しかし、米国ではもう一歩先に進み、多くの起業家が「非同期的」なアプローチを採用しています。具体的には、プレゼンのスライドに合わせてピッチ動画を作成し、あとは投資家がまずはその動画を各々試聴してから本格的に検討するか判断できるというものです。
例えば、RipplingのParker Conrad氏も実際にこの方法を活用しています。65億ドル(約7500億円)のバリュエーションで2億5000万ドル(約290億円)を調達するために、Conrad氏は13ページの資料に39分のプロダクト紹介動画を添えて各VCに送りました。紹介動画は、動画コミュニケーションツールのLoomで作成したものです。
資料としっかりした動画の作成に時間をかけたおかげで、それぞれの投資家へのピッチに何時間も割く必要がなくなり、Conrad氏は本当に興味を持ってくれている相手(クオリファイド・リード)にだけ集中できました。
また、送った資料や動画は各ファーム内でも回覧され、伝言ゲームのような伝達ミスも防げたそうです。誰もが、Conrad氏のピッチを「直接」聞けたのですから。
Protocolの記事でConrad氏も説明していますが、「仮に重要なミーティングを対面で行うのが普通の世の中であっても、最初のピッチを動画で伝えたほうがずっとたくさんの投資家にアプローチできる上に、1つのファームだけで考えても、より多くの人に直接的にアピールできる」と実感したそうです。
コロナ禍の中、この資金調達方法は「Loom、Zoom、Room」というフレーズで親しまれるようになるほど普及しました。おかげで、起業家は限られた貴重な時間を段階的に、少しずつ使えるようになりました。
まずはしっかりしたピッチ動画を1つ作り、次に真剣に興味を持ってくれた相手とだけZoomミーティングを行い、ファネルの最後に残ったリードとだけ直接会って面談するといった流れです(コロナ禍ではこの最後のステップは必要ないかもしれませんが、それはまた別の議論として置いておきます)。
日本でも「Loom→Zoom→Room」をスタンダードにしよう
この新しいスタートアップ資金調達のやり方は、関わる全ての人たちの時間を節約できます。特に起業家にとっての時間節約効果は大きく、より多くの人たちにアプローチしながらミーティングに費やす時間を減らすことが可能です。
その上、動画なので時間をかけて完璧なピッチに仕上げることもできるのです。従来の資金調達のように伝言ゲームで情報が失われることも防げます。
また、動画なら何回でも視聴し直すことができるので、同じ質問をVCから何度も聞かれるようなことも減るでしょう。
お互いにとってwin-winで、特に起業家にとっては非常に大きなWINとなる方法なのです。ぜひ、日本でも「Loom→Zoom→Room」をスタンダードにしましょう!
連載:VCのインサイト
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