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2022.02.16 16:00

「ボッシュ」が「PMO EX 新大阪」に求めた「個」の力を引き出すオフィスの思想とは

アフター・コロナの世界で、オフィス空間はどうあるべきか。野村不動産が、そのソリューションとして提案するのが、入居企業の戦略や成長に応じたワークプレイスの戦略的ポートフォリオのさらなる強化だ。

同社では、大規模オフィスと同等の機能性とグレードを併せもつ中規模ハイグレードオフィス「PMO」をはじめ、小規模スタートアップにも対応するクオリティ・スモールオフィス「H¹O」、サテライト型シェアオフィス「H¹T」を展開中。さらに2021年7月には、新たなオフィスブランドとして、空間を自由に拡張・縮小できる「PMO EX(ピーエムオー イーエックス)」の第一号拠点を新大阪に開業した。

開業から半年を経た「PMO EX 新大阪」には、大阪を本拠とする企業のほか、東京や西日本に本社のある企業の大阪支社や営業所など多種多様な業態の組織が入居している。なかにはドイツに本拠を置く、世界トップクラスの自動車機器サプライヤー「ボッシュ(Bosch)」の大阪営業所が移転してくるなど、グローバルなビジネス拠点としても注目を浴びている。

今回は、その「PMO EX 新大阪」を舞台に、ボッシュの渋谷本社事務所長兼渋谷施設管理部ゼネラル・マネージャー兼フュージョン・プロジェクト推進室シニア・ゼネラル・マネージャー下山田淳と、野村不動産の西日本支社都市開発事業部事業課の菊地莉果が、新時代におけるオフィスポートフォリオの重要性やイノベーションを促す「場の力」について、入居企業とデベロッパー、それぞれの立場から語り合った。


フレキシビリティを徹底追求した新ブランド「PMO EX」


───中規模ハイグレードオフィスの新ブランド「PMO EX」は、21年7月1日に開業した「PMO EX新大阪」が第一号物件となりますが、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか。

菊地:まず、野村不動産が都内と大阪エリアで展開する「PMO」は、1フロア1テナント設計で「一国一城」というコンセプトをもつブランドなのですが、「PMO EX」は、PMOシリーズの基本である1フロア1テナントに加え、より小さな面積帯で利用したいというニーズに応えるブランドになります。

ブランド名に加わった「EX」には、EXPAND(空間の拡張)やEXTEND(機能の拡張)、EXTRA(特別仕様)といった意味があり、PMOシリーズよりも各階フロア面積の広いビルがベースになっているので、さまざまな面積帯の利用ができることが大きな特徴です。

実は、本物件は用地を取得した段階では、新大阪という立地に相応しいワイド感をともなうPMOシリーズで展開する予定でした。ところが、ちょうど着工したタイミングでコロナ禍による半強制的なテレワーク化が推進されるという事態が発生してしまいました。オフィス需要が縮小へと向かうことも予測され、「このままではお客様のニーズに応えられないのではないか」ということで、急遽コンセプトを見直し、プラン変更に踏み切ったという経緯があります。

執務空間は無柱のフロア設計かつ16分割の個別空調を当初から採用していましたので、さまざまな面積帯に対応できる分割型のPMO EXとし、2階〜4階に「H¹O新大阪」を併設することで増床ニーズにもフレキシブルに応えられる体制を整えました。さらに、PMO EXとH¹Oテナントとの結節点としても機能し、貸し切りイベントや1on1MTG.など、入居関係者の方々が多様な用途でご利用いただけるヒューマンファーストサロンを設け、H¹Oに付随する共用ラウンジやシャワールームなどとともに共用部の拡充を図っていきました。これら数々の対策を講じたことで、フレキシブルで付加価値の高いオフィス環境をご提供できているのではないかと思っています。


地上12階の「PMO EX 新大阪」の2階〜4階部分は、「H¹O新大阪」となっている。

───着工のタイミングでプラン変更するというのは、デベロッパーとしてかなり大きな決断だったのではないでしょうか。

菊地:はい、大きな決断ではありましたがテナント様のニーズに応えるべく、施工会社の竹中工務店とともに開発関係者が連日夜を徹して議論を重ね、プランを練り上げていきました。

下山田:ロケーションにどんなコンセプトを吹き込むかは非常に大切なことですよね。ボッシュには技術力だけでなく、職場環境の快適さや社員の働きがいを非常に重視するカルチャーがあり、今回の移転に際していろいろなケースを想定・比較検討をして入居に至っていることからとても感慨深い気持ちでおりましたが、こうして開発ストーリーを聞けたことで、御社への信頼感も一段と増したように感じます。


菊地莉果 野村不動産 西日本支社 都市開発事業部 事業課 

「PMO EX×H¹O」のオフィスポートフォリオの効果とは


───下山田様にお聞きしますが、ボッシュの大阪オフィスの移転にはどのような背景があったのでしょうか。

下山田:ボッシュという会社は1886年創業のエンジニアリングの会社で、日本においては自動車産業のトップメーカーをはじめ、建機・農機の会社など、各業界の企業に各種部品やシステムを提供しています。その事業の性質上、お客様との密接なコミュニケーションが必要になることから、新大阪駅を含めて新幹線のぞみの停車駅の近くに営業所を設けており、そこにはさまざまな事業部から社員が出向しています。

これらは、いわば顧客接点の最前線といえるのですが、世界が急速にデジタル社会に移行しているなかで、営業所の形態にも変化の波が押し寄せてきています。具体的には、デジタル技術の進歩による情報のユビキタス化によって、組織に属する個々の社員への知識集約化が進み、またダイナミックな情報のやりとりが行われることで、流動的な変化が起きやすい環境になってきている。お客様のニーズも刻一刻と変化するため、営業所の人員配置をそれに合わせて柔軟に変えていく、そういう必要性が高まってきたのです。

そして、この傾向をさらに後押ししたのがコロナの感染拡大でした。テレワークをせざるを得ない環境の下でデジタル化がいっそう進展したこともあって、オフィスに求められる役割についても大きく変わってきた、ということが言えると思います。


下山田 淳 ボッシュ 渋谷本社事務所長 兼 渋谷施設管理部ゼネラル・マネージャー 兼 フュージョン・プロジェクト推進室シニア・ゼネラル・マネージャー 

───「PMO EX新大阪」とボッシュ様の接点はどのようにして生まれたのですか。

菊地:偶然にもこのビルのワンブロック先に、ボッシュ様の以前の大阪オフィスがあり、建築中に現地看板を立てていたのを事務所の方がご覧になりお問い合わせいただいたのがきっかけでした。実は私自身、学生時代にボッシュ本社のあるドイツ南部に一年間留学していまして、ワークライフバランスが整った会社として学生の評判もよかったボッシュ様にはある種の憧れももっていましたので、何かご縁のようなものを感じましたね。

その後、渋谷本社から下山田様がお見えになり、実際にお話をお聞きして内容を吟味したところ、新たなオフィスには、充実した環境に加え、コロナ禍の下での出社率や事業の流動的な変化に追随できる高いフレキシビリティを求められている、という点を強く感じました。そこで、基本的にPMO EXを執務空間として、H¹Oを会議室として借りていただき、HUMAN FIRST SALONとラウンジを有効活用していただくという「PMO EX×H¹O」の組み合わせを提案させていただいたのです。

下山田:はい、そのご提案がまさにぴったりマッチしましたね。普通に賃貸オフィスを借りてセットアップすると、コストも時間もかかりますが、PMO EXだと最初から高いレベルのオフィス環境が提供される。また、企業成長をさらに推し進め、イノベーションリーダーであり続けるためには、事業変化にスピーディに対応し、オフィスもそれに合わせてフィットさせていく必要がありますが、PMO EX×H¹Oの組み合わせは、このような要望にもきわめて柔軟に応えてくれる。これは非常に魅力的だと思いました。

事業の成長や人員の増加に伴って、オフィスを拡張したいというときには、もう一室H¹Oを借りることも可能ですし、必要に応じてスポット的に共用部の貸し会議室を使わせていただけますからね。

菊地:おっしゃる通りです。実際、ボッシュさんのようなスタイルは非常に人気で、おおよそ6割のテナントが2つのブランドを組み合わせて借りていただいています。今後のオフィス面積が見通せないなかで多様なスペースを組み合わせられる柔軟性を高く評価していただいたのではないかと考えています。



フレキシブルに空間を拡張・縮小できる「PMO EX新大阪」のオフィス空間


世界観を伝え、人と人をつなぐ、リアルな場所


───実際に「PMO EX新大阪」に入居された感想をお聞かせください。

下山田:これも何かのご縁でしょうか。実は渋谷本社の数メートル先にも「PMO」がありましてね。「PMO EX新大阪」が候補に挙がった際に代表取締役社長のクラウス・メーダーとともに内部を見学させてもらっているんです。ある程度想定はしていましたが、今日こちらに来てみて、本当に感心しました。

柔軟性はもちろんのこと、私たちがオフィスに求めたものに「働きやすく、モチベーションが上がる」、つまり“魅力的なオフィス”というものがあるのですが、ホテルライクなエントランスからセキュアな個室環境、2箇所あるサロンとラウンジまで、質感をともなう緻密なデザインによって、働く人のハートをしっかり掴んでくれていることを実感しました。

PMOの個室にオーダーメイドで設置してもらったカンファレンスブースもクリエイティブな思索に耽ることもできれば、非常に内密な話を進めることもできるという点でとても快適ですね。集中が続かなくなったら、ラウンジで気分転換。あるいは社員と誘い合わせてコーヒーでも飲みながら何気ない会話のなかから仕事のヒントを掴み取る。集中したいな、何か食べたいな、ちょっとひとりになりたいな、といった人間の欲求というものを自然にかなえる空間がここにはある。そういった意味で、「人間中心のオフィスづくり」というのを心がけていらっしゃるのではないかということを強く感じました。

菊地:まさに、私たちがオフィス事業で重視しているのが「ヒューマンファースト」という考え方です。心地よくリラックスした状態で、個の力とチームの力を最大限に発揮してもらいたいという願いを具現化しています。

居心地のよさという観点から補足しますと、PMOではオフィスを単なる仕事場ではなく、どこか生活感のある空間を設えるというデザイン思想があり、とりわけ共用部のソファや椅子など身体に触れる家具類には心を砕いています。本物件で使用しているアイテムの多くは、「ヒュッゲ(HYGGE)=心地よい空間・時間」をコンセプトにもつ、デンマークのボーコンセプトとコラボしたものです。今回はじめて館内にモデルオフィスも併設しています。

───モデルオフィスというのは、デベロッパーならではの取り組みですね。下山田さんは、ボッシュ渋谷本社1階のカフェ&ショールーム「café 1886 at Bosch」の発起人であり、「場」に対する独自の思想をもたれています。PMO EX新大阪の空間デザインに共感されるところもあるのでしょうか。

下山田:もちろんです。私は、「場」とはこうあってほしいという願いを包む器だと考えていて、café 1886 at Boschにおいては「日本でももっとボッシュを知ってもらいたい」という願いをデザインに翻訳することで、身体性をともなうリアルな場を創出しました。大切にしたのは、ごく自然に世界観が伝わり、人と人がつながり、新たな化学反応を起こす場の力です。PMO-EXの空間デザインからも、このことを強く感じ取ることができました。

上質でグレード感の高い空間は、お客様を迎えるときにもプレゼンテーション力を発揮してくれます。私たちが伝えるのは、「前の会社の近くで、より新大阪駅に近い場所に移転しました」という情報だけ。ビジネスをここから前へ進めたいという思いは、オフィスが雄弁に物語ってくれると感じています。

働く場所の選択肢が増える時代、オフィスに求心力を


───働く場所に縛られない柔軟な勤務、オフィスの分散化、集約化、効率化など、あらゆる企業でオフィスのあり方が見直されるなか、これからのオフィスに求められることは何か。お二人のお考えをお聞かせください。

下山田:先ほど、デジタル化の進行によって、組織に属する個人への知識集約化が進むというお話しをしましたが、このことは個人に対しては求心力となる一方で、組織に対しては遠心力として働く傾向があると思っています。どういうことかというと、かつて、情報のダイナミックなやりとりが少なかった時代は、情報伝達が上から下への一方通行になりがちでしたが、組織としての統制力や結束力を高める方向には働いていた。しかし、デジタルの時代においては、個人への知識集約が進むがゆえに、旧態依然の環境では皆がばらばらの方向を向いてしまい、組織としての力は弱まってしまうのです。

一人ひとりがプレーヤーとなるデジタルの時代だからこそ、人と人が触れあい、互いをリスペクトして意見を出し合うことで、方向性をすり合わせていく。そういう環境を生み出すための「リアルな場」の存在が非常に重要になってきていると思います。

菊地:そうですね、実際にPMOへの入居を決められる企業様でよく見られるパターンが、近隣からの縮小や拠点統合です。その際、単なる縮小・統合ではなく、オフィスを「コミュニケーションの場・シナジーを起こす場」として捉え直すケースが増えていると感じます。

自宅やサテライトオフィスなど、ひとりでテレワークができる環境は、コロナ禍を契機として一気に進展しましたが、今後さらに働く場所の選択肢は増え、それぞれの役割の明確化が進むと考えられます。そういう意味でも、「オフィスに行きたい」「皆に会いたい」と思えるような魅力的なオフィス環境を提供し、お客様からのフィードバックによってさらにブラッシュアップしていく。そうやって、オフィス勤務という選択肢の洗練度を上げていくのが、私たちの役割だと思っています。

下山田:とても共感できます。このオフィスに入居してからまだ日は浅いのですが、従業員からはポジティブな声が多く届いています。現時点では、コロナの影響で在宅率が高く、出社率はまだ低いのですが、今後使い込んでいくなかで、またいろいろな意見が出てくると思いますので、ぜひ一緒にブラッシュアップしていきましょう。



- 後記 -
柔軟性に富む働きやすい環境を求めたボッシュの未来を受け止めたのは、コロナ禍において妥協なき開発を推し進めた「PMO EX」だった。両者が共有する「人間中心のオフィスづくり」に終わりはない。よりよい働き方とオフィスのあり方を追求し続ける、その進化のなかにこそ、オフィスの本当の価値があるのではないだろうか。


【連載】 Innovative Destinationーイノベーションを生み出す「目的地」へー

#1 公開中|少数精鋭の企業で働く人に「最適な場」を。「H¹O」がオフィス環境にイノベーションを起こす
#2 公開中|HUMAN FIRSTなオフィス環境が、イノベーションを生む新時代のワークプレイスに。
#3 公開中|求めたのは、いままでの常識を破るオフィス。SUBARUが「H¹O」でエンジニアのワークプレイス改革に突き進む
#4 公開中|アフターコロナへ向けて変化するスタートアップのオフィス需要。 誰もが自分らしく働ける「ヒューマン・ファースト」の定義とは
#5 本記事|「ボッシュ」が「PMO EX 新大阪」に求めた「個」の力を引き出すオフィスの思想とは
#6 coming soon...





菊地 莉果◎野村不動産 西日本支社 都市開発事業部 事業課/東京理科大学卒。野村不動産株式会社にて中規模ハイグレードオフィス「PMO(ピーエムオー)」の運営業務に従事したのち、基準階の分割対応やラウンジ設置などの機能拡張を実現したPMO派生ブランド「PMO EX」を立上げる。1号物件となる「PMO EX新大阪」、関西エリアの初となるサービス付き小規模オフィス「H¹O(エイチワンオー)新大阪」のリーシングを担当。

下山田 淳◎ボッシュ 渋谷本社事務所長 兼 渋谷施設管理部ゼネラル・マネージャー 兼 フュージョン・プロジェクト推進室シニア・ゼネラル・マネージャー/東京都生まれ。ウェイクフォレスト大学卒。ソニー株式会社にて広報、ブランドマーケティング、CEOアシスタント、ロケーションブランディング、ドイツ・ベルリン赴任などを経て、2013年にボッシュ入社。コーポレート・コミュニケーション部GMとして、日本におけるボッシュブランドの認知向上施策をリードし、世界初の「café 1886 at Bosch」を2015年に渋谷本社にオープン。現在、横浜市に建設中の新社屋プロジェクトを統括。


Promoted by 野村不動産 / text by Sei Igarashi / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro