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2022.01.30 11:30

サステナブルを前面に ミシュラン「グリーンスター」店の実践


この生産者とのつながりが、大切な“Neoud”のひとつだ。野菜に関しては、できる限り有機、無農薬なものを選ぶことを基本にしている。フードマイレージのことも考慮し、関東近郊のものを中心に使用している。しかし、日本は南北に長い国、荒天による欠品などもあるので、完全に地域を限定できないのもまた事実と、レストラン経営の難しさの一面を示してくれる。



魚は千葉の美浜漁港の市場(美浜区にある市場)の魚屋さんから送ってもらっている。なるべく、豊洲などの市場に出にくい、意図せず水揚げされてしまった魚を中心に買い取るというのが基本のスタンスだ。

仕入れ日には、獲れた魚の状況が細かくLINEで届き、それをベースに仕入れを決めるわけだが、「余っている、買ってもらえないか」というリクエストには極力応えるようにしているという。これは、日本の漁業のわずかでも助けになればという思いからであり、それができるのは、中塚氏的に、調理工程でどうにかできる自信があるからでもある。

実は、中塚氏は美浜区に縁がある。「幼少期に美浜に住んでいて、そのときの市場の記憶を頼りに訪ねてみたんです。片端から魚屋に飛び込んで、レストランで使いたい旨を伝えたところ、最も熱心に話を聞いてくれて、締め方や扱いなども丁寧に説明してくれた店と、今も取引を続けています」。

「和牛」は使わない


肉は、ジビエと、無投薬・無ワクチンの家禽、豚肉のみと決めている。和牛は、飼育の際のCO2の問題はもちろん、失明の危険があるほどにビタミンAを制限してサシを重視するような育て方、さらには肉質が自身の料理にはそぐわないと考え、使用しないのだそうだ。

最も力を入れているのはジビエで、趣味性のあるハンティングということではなく、害獣駆除として仕留められた鹿、猪をメニューの両輪に据えている。



調理においては、「無駄なくすべてを美味しく食べきってもらう」ことを一番の信念としている。それは、生産者への畏敬の念のあらわれである。せっかく育ててくれたものを途中で廃棄するのは、できる限り避けたいからだ。ジビエであれば、不可食部位もミンチにする、フォン引くなど、余すことなく使いきる。
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文=小松宏子

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