期待感と喪失感が交差? 50代キャリーたちが紡ぐ「SATC新章」の注目点


喪失感を伴う最大の理由は、やはり、キム・キャトラルが演じてきた人気キャラクターであるサマンサの不在です。オリジナルの「SATC」はキャリー、ミランダ、シャーロット、そしてサマンサの「4人」の話であり、それぞれの生き方に魅力を感じるファンが多いなかで、リブート版ではキム・キャトラルの出演が叶わず、「3人」の話にせざるを得なかったという経緯があります。

事前情報からファンの間では周知の事実となってはいましたが、いざ配信が始まると「サマンサ不在」という喪失感に直面せざるを得ませんでした。

一方で、復活そのものに対する期待感が高いことは数字に表れています。U-NEXTの海外ドラマジャンルにおいては配信開始初週の視聴者数が歴代1位を記録しました。「ずっと待っていた!」「パワーアップしていて面白い!」などの共感の声も続々と集まっています。

リブート版の登場人物は多様性を強化


レジェンド級の復活作品の宿命なのか、「期待感」と「喪失感」の交錯は続きます。第1話のラストシーンは新章の扉を開くための予想外の展開で、大きな「喪失」が描かれ、衝撃を受けたファンも多かったのではないでしょうか。

それは、映画版で登場した青のマノロ・ブラニクの靴がキャリーの運命を変える象徴として再び登場するシーンから始まります。衝撃的な事件が起きたシーンに関係するアメリカで人気のフィットネス・サブスク「ぺトロン」は、実際に株価が下落するほど、視聴者に大きな衝撃を与えました。

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それほどインパクトのある展開であることに間違いありませんが、製作陣にとって、オリジナルを超えるために避けては通れない設定であったと理解もできます。

もちろん、ファンの期待に応えるオリジナルをオマージュしたシーンも、用意されています。タクシーを呼び止めるキャリーの姿や、クルス・ノース演じるミスター・ビッグの料理シーン、ビッグが「オーブンにセーターを入れている頃から君を知っている」とキャリーに語るところなど、そのままこれまでのシリーズを見直したくなるほどの気持ちになるシーンもあります。

お馴染みのキャラクターのその後が描かれていることも、続編ならではの楽しみです。ミランダのパートナーであるスティーブ(デビッド・エイゲンバーグ)も、シャーロットのパートナーのハリー(エヴァン・ハンドラー)も健在です。

キャリーのもう1人のパートナーとも言えるスタンフォードも登場しますが、撮影期間中の昨年9月、演じたウィリー・ガーソンが病気のためこの世を去りました。これは誰もが意図しなかった、大きな喪失でした。

一方、新たに投入されたキャラクターも、「SATC」らしさを発揮しています。キャリーが劇中で出演するポッドキャスト番組を仕切るチェ役がその1人。ドラマ「グレイズ・アナトミー」にも出演していたメキシコ出身の俳優サラ・ラミレスが演じ、ノンバイナリーでクィアのスタンダップコメディアンという役回りです。

また「シャーロットのブラック版」というアンソニー(マリオ・カントーネ)の台詞がその役柄を言い当てているのがリサ。ニコール・アリ・パーカーが演じ、キャリーと共に新たなファッション・リーダー役も担っています。

ミランダが新たなキャリアのステージを求めて通うコロンビア大学ではカレン・ピットマンが演じる教授役のニアが登場します。いずれも加わった新キャストは非白人の俳優が揃い、リブート版で多様性を強化しようとする製作陣の意図が伝わってきます。

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ニア役のカレン・ピットマン(c)2021 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license.

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文=長谷川朋子

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