昨年4月に「ANA国際線機内食がネットで30万食以上完売。『非航空事業』模索の現況と行く先」で、機内食のオンライン販売が好評を博していることをお伝えした。その後も人気は衰えず、ANAは国際線エコノミークラスの機内食だけで140万食以上を売り上げている。中食需要の高まりにうまくはまったとはいえ、この数字は快挙と言えるだろう。
国際線ビジネスクラスの機内食も販売がスタートするなど、新たな動きを見せているANAの非航空事業の今にあらためて注目してみた。
ANA、営業利益黒字転換。コロナ禍初、8四半期ぶり
変異株によって繰り返される流行の波により、航空業界の苦境はいまだ終わりが見えない。
ANAは昨年10月29日、2022年3月までの1年間の連結業績予想を35億円の黒字から1000億円の赤字に下方修正したと発表した。前年が4000億円を超える赤字であったことを考えると大幅に損益幅を改善はしたが、同社はコスト削減のため、退職などの自然減や採用中止などによって、2025年度末までに従業員を約9000人減らす計画も明らかにしている。
ただ、このたびの2月1日の決算会見では、コロナ禍初、8四半期ぶりとなる営業利益黒字転換が発表された。国際貨物が過去最高の売上高を更新、5四半期連続で過去最高の売上高となったという。
苦境をはね返すべく、非航空事業拡大に間断なく取り組んできた同社。以下、その最新事情を追った。
ANAスーパーアプリなど、非航空事業拡大を模索
コロナ禍の影響が長引くなか、航空会社各社は収益の柱を増やすべく非航空事業の拡大を模索している。
例えばJALの非航空事業では、社内公募で選ばれた客室乗務員が自分の故郷やゆかりのある地域に移住して活性化を図る「ふるさとアンバサダー」が話題を呼んだ。これは「JALふるさとプロジェクト」の一環で、このプロジェクトを通じてJALは地域の資源を生かしたコンテンツ創出や「JALふるさと納税」などに取り組んでいる。
一方、コロナ禍前の2016年から「ANAのふるさと納税」をすでにスタートさせていたANAは、昨年3月に非航空事業の収入を5年後には4000億円に引き上げるという計画を明かした。2022年度中の提供開始を目指す「ANAスーパーアプリ」を起点に、マイルで生活できる世界の実現を目指すという。
マイル事業の顧客基盤の強化・拡大を図るため、日々の生活でマイルを貯められるモバイルアプリ「ANA Pocket」のサービス提供も昨年12月から始まっている。日常生活で歩いたり自転車や自動車で移動したりするだけでポイントが貯まり、そのポイントでガチャをひくと特典がゲットできるというアプリだ。会員プランによっては、ANA SKYコインやANAのマイルが当たるガチャをひくことができる。
「非日常」を届ける機内食販売
こうした非航空事業の一環が国際線機内食のオンライン販売だ。コロナ禍でフライトの大幅な減便が続くなか、いち早く機内食通販に乗り出したのがANAだった。
賞味期限が差し迫った国際線エコノミークラス機内食のメインディッシュを12食セットで売り出したのである。フードロスの削減と、「地上でも機内食を食べたい」というコロナ禍以前から寄せられていた要望の双方に応えたというのは既報の通りだ。