ライフスタイル

2022.02.03 10:00

吸う・吸わない人々がともに行きたくなる場所へ 喫煙所ブランド「THE TOBACCO」の挑戦


「ポイ捨て図鑑」で近づいた行政との距離



「ポイ捨て」図鑑の屋外広告(渋谷)
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「THE TOBACCO」のほかに、山下が21年12月から取り組んでいるのが「ポイ捨て図鑑」だ。これは道端などにポイ捨てされている吸い殻を撮影した写真を集め、ウェブサイト上で公開する特殊な試みである。

「『THE TOBACCO』を出店していくにあたり困ったのが、どこでタバコが吸われているかを把握することでした。そこで出店場所を見つけるために、みんなの力を借りたのです。

当初はゴミを撮影して公開するのはどうかと言われましたが、ゲーミフィケーションとして有効なのではと考えました。
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蓋を開ければ1カ月で600点を超える投稿が集まりました。これによりどこで吸い殻が捨てられているかを私たちはデータで把握することができ、次の出店候補場所を絞り込めるようになったのです」

この斬新な試みは豊島区など行政の注目も集め、連絡が舞い込んで来たという。ポイ捨てを防止するために運動に役立てられる仕組みだと理解されたのだ。

「ポイ捨て図鑑」のサイトにちょっとしたストーリー投稿されたポイ捨てタバコ。

みんなの「好き」が受け入れられる社会へ


「ショッピングモールやオフィスビルなどの喫煙所設置に関わることも多くなったのですが、そこで感じたのは“喫煙体験”の向上について考える人が少ないという事実です。顧客体験は考えても、喫煙に対する体験価値には注意が向いていないのです」

吸う・吸わない人がそれぞれ尊重し合い共存するために、吸う人の「好き」を究める必要があると、山下は指摘する。それぞれの「好き」が受け入れられる社会を、コソドは目指しているからだ。

事業のマネタイズに関してはまだ途上だが、山下は、「THE TOBACCO」出店先でポイ捨てが8割減ったなどの話を聞くと「少しずつでも社会を変えることができている」とうれしく感じると語る。

「将来的には万全の空調・換気対策を実現し、AIカメラなどのテクノロジーを惜しみなく使うことで、吸う人・吸わない人がともに楽しみ、共存できる“場”をつくりたいですね」



山下 悟郎(やました・ごろう)◎2007年のデジタル領域の映像プロダクション・モバーシャル設立を皮切りに、MOVAAA、犬種特化型オンラインメディア「FrenchBulldogLife」などを運営するrakanuの代表取締役を務めた後、コソド代表プロデューサー兼代表取締役に就任。講師としても宣伝会議/デジタルハリウッド/バンタンデザイン研究所で教鞭を執った。

text by Ryoichi Shimizu photographs by Masahiro Miki edit by Yasumasa Akashi

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