ビジネス

2022.01.28

顧客を「次のステージの橋渡し」へ。りそなホールディングスのSDGs経営の秘訣

りそなホールディングス 取締役兼代表執行役社長 南昌宏


「時代の変化」を顧客とともに


そんな細谷の薫陶を受けてきた南も「変革は人材がすべて」と言い切る。りそなHDは国内金融機関として「リテール(個人・中小企業向け)No.1」を目標に掲げている。関東圏や関西圏を中心に個人で1600万人、法人では中堅・中小企業を中心に50万社の顧客を抱える。その基盤に加え、日本最大の「信託併営リテール商業銀行グループ」という強みを生かしてリテール分野でトップを狙う戦略だ。

その柱となるのが、多様な価値観を取り入れるためのダイバーシティであり、りそなHDが「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」と呼ぶSDGs経営の推進だ。

「日本の企業は99%が中堅・中小。その顧客が抱える課題を解決し、持続的(サステナブル)に付加価値を生み出せるように『次のステージへの橋渡し』をする。これが、今後の金融機関のミッション(使命)だと考えています」と、南は決然と述べる。

経営をSDGsの観点から見直し、持続可能な環境や社会、経済を実現していくことが、大企業で徐々に本気の取り組みが見られ始めている。大企業がSDGs経営にのっとり、サステナブルでないと考えた取引を縮小したり、取引先を打ち切ったりする事例が出てくる可能性が高いといわれている。

「SDGsを意識し始めた中堅・中小企業に、いまはどのような位置にいて、どの方向にかじを切れば新しい付加価値を生めるのか。そんなSXのあり方をお客さまと一緒に考える伴走者になることで、りそなグループは社会での存在価値を高めたい」

顧客の「進化」を支えるため、30年度までに中小企業向けに計10兆円のESG投融資を実施することも決めた。

それが具現化する未来を実現するには、まだまだリーダー級の人材が必要だとも南は話す。りそなグループにいる約3万人の社員のうち、すでに6割が03年以降の入社だ。

りそなグループの歴史のなかで、最もつらかった時期を、どのように伝え続けるのか。

「もっとよくなるという世界観を追い続ける姿勢や、変革をドライブさせる力、チームと人材の能力を引き出し、本業で正しく収益を上げられる。そして(顧客や社会との)約束を果たすこと。こうした志をもつ多様な人材を集め、リーダーとして育てていく。これが細谷さんから受け継いだ、りそなの『変革のDNA』なのです」


みなみ・まさひろ◎1989年、関西学院大学商学部卒業後、埼玉銀行(現りそなホールディングス)入行。グループ戦略部長、取締役執行役オムニチャネル戦略部担当兼コーポレートガバナンス事務局副担当などを経て、2020年4月より現職。りそな銀行取締役(現任)。

文=三河主門 写真=鷲崎浩太朗

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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