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2022.04.27 08:30

事業のピンチは予測可能か?「経営ディストピア回避」 を春樹文学に学ぶ

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「村上春樹に学ぶ経営」連載の第4回。「未来は予測できない」ことを知ったいま、指導者の求められているものとは──。コロナ禍ピークの頃の状況を反映し、まずは以下の図表をご覧いただきたい。


未来は経験では予想できない


一つ目は、コロナ禍が始まった当初(2020年2月〜4月)、新聞やネットで頻繁に目にした、米国の失業保険申請者数。

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このグラフをみて、『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』(ナシーム・ニコラス・タレブ著、ダイヤモンド社)を思いだした方も多いかも知れません。

同書の上巻89ページの図表は上記図表と瓜二つです(上下逆ですが)。七面鳥が毎日人間から餌を与えられ幸せな日々をおくり、人間との信頼関係指数が日々改善していたったところ、突然裏切られる(食べられてしまう)という話です。「ブラック・スワン」に関し深く考えた同書を、筆者は再度読み直しました。

そして二つ目。日本政府が公表した南海トラフ地震の被害者数の予想です。東日本大震災の後に死者数の予想は2.5万人から23万人に修正されています。

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今後、日本政府もしくはWHOから発表される(かもしれない)次の感染病の予想は、これまでと異なったものになることでしょう。予想の無力さ、虚しさを改めて実感させられ、筆者が思い出したのは、村上春樹さん『1Q84』の中のこの一文です。

『青豆は一九二六年のチェコ・スロバキアを想像した。第一次大戦が終結し、長く続いたハプスブルク家の支配からようやく解放され、人々はカフェでピルゼン・ビールを飲み、クールでリアルな機関銃を製造し、中部ヨーロッパに訪れた束の間の平和を味わっていた。フランツ・カフカは二年前に不遇のうちに世を去っていた。ほどなくヒットラーがいずこからともなく出現し、その小ぢんまりした美しい国をあっという間にむさぼり食ってしまうのだが、そんなひどいことになるとは、当時まだ誰一人として知らない。歴史が人に示してくれる最も重要な命題は「当時、先のことは誰にもわかりませんでした」ということかもしれない。』(『1Q84 BOOK1』、新潮社)

10年にわたる経済発展に沸いていた2019年の世界は1926年のチェコ・スロバキアと同じかもしれません。

未来は予想できない。そして、どんなことが起きても適切に対応し、国民を守り、企業を生存させなくてはならない為政者、経営者は大変な重責だと改めて考えさせられます。今回の危機で「指導者に求められるもの」として筆者が感じたのは以下です。

非難を覚悟で断行する


例えば2020年1月末に国境を完全封鎖した指導者がいれば、彼・彼女は後世に名を遺したでしょうが、その時点では想像を絶する非難を浴びたことでしょう。「ウイルスぐらいでなぜそんなことするのだ」「俺の生活どうしてくれるんだ」、と。

思い出していただきたいのです。2020年3月初旬でさえ安倍総理が韓国からの入国を制限した時、韓国はもちろん国内からも強い非難を浴びたのですが、非難したことを誰も反省していません。状況を深く認識し、自分の判断を信じる覚悟が必要だと感じさせられました。

間違ったと思ったときは素早く変更する


とはいえ、常に正しくあることは不可能でしょう。アメリカのトランプ前大統領の発言が過去どのように変化したか(間違ったか)を検証する報道が盛んに行われました。

しかし、後から間違いを認めるのは簡単です。指導者はその時々に決断し、もし間違っていれば修正していく勇気が必要だと感じます。間違ったのは、間違ったことそのものではなく、未来を予測できないという真理のもとで間違いを認め訂正しなかったことだと言えないでしょうか。
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文=村田朋博

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