ビジネス

2022.04.13

「社内70%が賛成してから、顧客が欲してからではもう遅い」という真実

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村上春樹に学ぶ経営の真実

早稲田大学は昨年10月、「早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)」を開館した。

実は、その建設費用12億円は、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が寄贈している。村上氏と柳井氏はともに早稲田大学出身で、同時期に在学していたと言う。

柳井氏のみならず、実業界に村上春樹ファンは多い。その理由は、読み込むと意外にも、「経営」のヒントが隠れていることがあるかもしれない。

春樹文学と「ビジネス」との接点を模索する連載「村上春樹に学ぶ経営」、その3回目となる本稿では、前回に続き今回のテーマも「差異化」「天邪鬼」「人と違う」だ。


人と違う道


『ものを創造する人間は基本的にエゴイスティックにならざるを得ない、というとけっこう傲慢な物言いになってしまうが、それは好むと好まざるとにかかわらず、紛れもない事実である。いつもまわりを見まわして、波風を立てないように、他人の神経を逆なでしないように、常にうまい落としどころを考えながら生活を送っていたら、どのような分野であれ、その人には創造的な仕事なんてまずできないだろう』。

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮社)からの引用です。同書は村上春樹氏と、指揮者小澤征爾氏との対談集ですが、対談というよりは、「音楽が大好きな二人がウィスキーを傾けつつ、音楽を聴きながら音楽について語りあった」本です。音楽に関して門外漢の筆者は専門的なことは一切理解できませんでしたが、そんな人間が読んでも楽しいので、音楽好き、特にクラシック音楽好きの人にはたまらない一冊ではないでしょうか。


Getty Images

閑話休題。新しい技術・製品を開発するにあたっては、いわずもがなではありますが、人と同じことをやっていても無理です。このことを端的に言い表したのが、クラレや中国電力などの元社長にして篤志家としても知られる大原孫三郎氏の一言です。

「仕事を始めるときには、十人のうち二、三人が賛成するときにはじめなければならない。一人も賛成がないというのでは早すぎるが、十人のうち五人も賛成するようなときには、着手してもすでに手遅れだ。七人も八人も賛成するようならば、もうやらないほうが良い」(『大原孫三郎-善意と戦略の経営者』兼田麗子、中公新書)。

いかにして人と違う道を往くか?


現実には、皆が共通の目標に向かって開発をしている業界が多いように思います。その象徴的な事例はテレビです。大画面、画素数、低消費電力……その時々で訴えるポイントは変わってきましたが、結局は同じ土俵での競争だったと言えそうです。

もちろん、開発の現場では差異化を必死に追及していたことは間違いないでしょうが、家電量販店に並べられている多くのテレビのメーカー名を隠したとしたら、消費者にはどのブランドかわかる人はいないでしょうし、もしかしたらプロメーカー関係者でもわからないかもしれません。

プロでも区別がつかないような製品であれば、価格競争しかないというのは当然のことでしょう。電波を受信して、映す──という基本構造が変わらない以上、当然ではあるのですが……。
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文=村田朋博

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