鈴木:確かに面白いですね。これまで、イメージや概念でしかなかった地方創生、別の言葉で言えば、お題目だけでなかなか進んでこなかった地方創生が、新しい資本主義のあり方とも絡んで、具体的な施策として大きく進んでいく契機になりますね。
リスク分散や持続性の重視。地方に移転した省庁が、物凄いインテリジェント・ビルや、ビルではないにしても、テクノロジーをフルに活用したオフィスとして地方に出現すれば、まさにデジタル田園都市国家の体現にもなる。なんだかんだで、特に地方においては、役所や役人が変われば、地域社会が大きく変わる契機になりますからね。
朝比奈:コンパクトシティの議論では、インフラの維持コストから中心部への集約が言われましたが、実は、ITインフラにきちんと投資すれば、無理に集住させずとも済む可能性が出てきました。例えば遠隔医療を当たり前にしたり、ドローンで購入物を届けたりするのが当然になれば、分散的に暮らしていても問題ありません。水やエネルギーの供給についても、テクノロジーの発展で、分散型が実現していく可能性があります。
鈴木:首都機能の各地への移転による拡都というマクロ目線でも、一つの地域内での分住というミクロの意味でも、分散型都市の可能性が見えてきます。地方創生につながりますし、いわゆるワイズ・スペンディング(賢い支出)による景気浮揚効果もありそうですね。生産性の向上につながる感じのない、将来を感じないバラマキ的財政支出に比べれば、このデジタル田園都市国家に向けた首都機能移転には、地方創生の新しい可能性を感じます。
対談風景 左が朝比奈一郎氏、右が筆者、撮影時のみマスクを外して撮影(西麻布の「エネコ東京」個室にて)
テーマ3:ワーケーションの未来/人々の交わりの可能性
鈴木:ここまで非常にスケールの大きい地方創生策について議論してきました。岸田政権が打ち出しているコンセプト、すなわち「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」も意識しての首都機能移転策は、効率だけではなくリスクの分散やサステイナビリティも考えた、また国を挙げてのDXにも資する効果的な策に思えます。景気浮揚にもつながる。
しかし、地方創生は、ハード面だけではうまく行かないのも事実だと思います。施設や組織などを機械的に分散しても、魂は入りません。
私が推進しているワーケーション(一般社団法人日本ワーケーション協会の定義:非日常の土地で仕事を行うことで、生産性や心の健康を高め、より良いワーク&ライフスタイルを実施することができる1つの手段)などに即して考えると、ただ、地方にワーケーション拠点だけを作って、とにかく景色が良いからそこで仕事したり遊んだりしろ、と言ってもなかなか続かない。人と人との交流と言うソフト面が極めて重要だと思いますが、朝比奈さんはどう考えますか?