テーマ2: 新しいライフスタイル/地域の可能性 ~首都機能移転~
鈴木:これまでの議論で、新しい資本主義は、経済合理性を過度に重視した都市への人口・機能集積を越えて行くべきであること、特に日本的な意味でのサステイナビリティ・持続性を重視していく重要性が示されました。これを新しいライフスタイルや地方との可能性に絡めて解釈すると、具体的には、どういう施策に繋がって行くでしょうか。
朝比奈:私はずばり、首都機能移転が一つの解だと思っています。コロナ禍で、確かに、東京からの人口流出が多少進んでいるのは事実ですが、まさに“多少”というレベルで、日本のあり方を変えるほどのインパクトはありません。コロナが収束すると、下手すると、また逆回転して、東京への集中が進まないとも限らない。実際、東日本大震災で、一極集中のリスクがあれだけ言われても、今回のコロナ騒ぎになるまで、皆、ケロッとそのリスクを忘れていました。
持続性や新しいライフスタイル、即ち、風光明媚な地域で延び延びと暮らし、QOL(quality of life)をあげていく流れを加速するために決定打となるのが首都機能移転だと思います。
鈴木:首都機能移転と言うと90年代に一時期かなり議論が盛り上がったものの、大山鳴動してねずみ一匹と言いますか、ほぼ実現しなかった印象があります。したがって容易ではないと思いますが、確かに大変興味深い発想だと思います。少し前のTBSドラマの日本沈没のように、関東がまず海に沈む、というなら移転の議論も容易でしょうが、なかなか現実には難しいと思います。突破口はありますか?
朝比奈:例えば、まず、環境省を那須塩原に移すなど、個別省庁をそれにふさわしい場所に徐々に映して行けば良いと思います。2022年度中に文化庁の京都移転が実現する見込みですが、文化と京都、というストーリーにおける親和性は大事です。“ふさわしい”とはそういう意味です。環境と那須塩原なども丁度良いでしょう。
観光庁を軽井沢に、デジタル庁を浜松に、などと移して行けば良いと思います。那須塩原や軽井沢から東京は新幹線で1時間強ですし、今後、リニアモーターカーが実現すれば、東京-大阪間は1時間強であり、理屈上は、八王子などから東京に通勤するのと時間的に大して変わらなくなります。
首都機能移転の考え方の一つに「拡都」というものがあります。東京からどこかに首都機能をボーンと移すというよりは、東京は一つの中心として残しつつ、そこから首都を拡大させていく、という考え方です。私は、関東圏から関西圏まで全体を一つの大きな「首都」に見立てて、その中で、様々な省庁などを分散させていくアプローチが良いと思います。
少し先の未来ですが、現在、一応計画されているスペースポートが出来て、宇宙空間を通じたロケット移動が一般化すれば、日本とアメリカは約40分で結ばれるとも言われています。そういう時代に即した考え方が重要だと思います。