荒れる相場 ハイテク株の値下がりと、バリュー株の上昇

Spencer Platt/Getty Images

世界の株式相場が荒れ模様だ。特にハイテク株の値下がりが目立つ。米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)の前倒しなど、金融引き締めへの準備を急ぐとの観測が広がっているのが背景だ。金利が上昇するとハイテク株の割高感は強まりやすい。

なぜ、金利上昇に伴ってハイテク株が割高になるのか。株式の益利回りとの関係で説明が成り立つ。益利回りは株式投資の代表的な物差しである株価収益率(PER)の逆数。1株当たり利益を株価で割ってはじき出す。PERが20倍なら益利回りは5%という計算だ。

ハイテク株にはPERの高い銘柄が少なくない。たとえば、50倍のPERは50年分の利益を株価が織り込んでいることを意味する。中長期の成長期待が反映されているというわけだ。PERが高くなるほど益利回りは低下する。つまり、金利上昇時には、必然的にハイテク株の魅力が薄らぐ。

理論株価からも説明が可能。株価は「投資家が将来にわたって得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いたもの」と定義される。遠い将来の利益成長を前提にしている銘柄ほど金利変動で受ける影響が大きく、理論上の妥当な株価が下がってしまう。

実際、ハイテク株の多い米ナスダック総合株価指数は年初から約12%下落(21日時点。以下、同)。象徴的なのはネットフリックスの値動きだ。20日に今年1~3月の会員数が250万人の純増との見通しを公表したのをきっかけに、同日の時間外取引で一気に20%あまり下落した。米メディアによると、アナリストは600万人近い増加を見込んでいた。市場予想を大幅に下回ったことが投資家の失望売りを誘い、マーケット全体にも暗い影を落とした。

日本の市場でもハイテクなどいわゆるグロース株が軟調に推移。新興株市場の東証マザーズ指数は今年に入って約18%の値下がりを記録している。

バリュー株指数が上昇する理由


これに対して、割安な銘柄と位置付けられるバリュー株は底堅く推移する。TOPIX(東証株価指数)のグロース株とバリュー株両指数の推移をチェックしたところ、グロース株指数は2021年末比で約8%下落。一方、バリュー株指数は同1%上昇と、小幅ながら同年末の水準を上回っている。

業種別指数の動きを見てもバリュー株が優位なのは明らかだ。東証33業種のうち、値上がりは16業種。上位には保険、非鉄金属、銀行など代表的なバリュー株がズラリと並ぶ。値下がり率1位は精密機器、2位が電気機器といずれもハイテク業種である。
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文=松崎泰弘

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