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2022.01.21 07:30

米小売店の悪夢は「返品」、返品額は年間売上の約10%に相当


小売業界におけるサステナビリティや透明性、倫理的な行動が重視されているなかでは、小売店はどこも、アマゾンのように悪評を買うわけにはいかない。アマゾンの他にも、多数の高級ブランド(バーバリーやカルティエなど)がこのところ、何十億ドルにも相当する売れ残りの新品を廃棄処分していたとしてバッシングを受けている。

返品をめぐる問題は、解決が容易ではない。消費者が寛大な返品規定にすっかり慣れてしまっているのはもちろん、Eコマースのデータ処理を行うグラニファイ(Granify)が数年前に行った分析では、オンライン消費者が購入時の最大の決め手に「返品可能」を挙げ、レビューや価格よりも重視していることがわかっている。

スムーズな返品手続きは、顧客体験をかたちづくる要素の一つであり、売上アップにつながることが示されている。

小売業者側は、返品率を下げようと工夫している。その意外な方法の一つが、テキサス大学が2016年に行った研究で明らかになった。この研究では、経済学、マーケティング、意思決定科学、消費者心理学、経営という各分野における、消費者行動に関する研究論文21本が検討された。その結果、返品可能な期間を最大90日間と長めに設定すると、購入者が返品を思いとどまると見られることがわかったのだ。その理由として、「消費者が商品を手元に置いておく期間が長くなればなるほど、愛着がわいて、返品する確率が下がる」からではないかと推測されている。

論文は、すべての返品規定が同じわけではないと結ばれており、小売業者が資金を投じる価値がある研究分野であることを示唆している。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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