研究チームは、2007年~19年にカナダ・オンタリオ州の成人が受けた132万108件の手術を調べた。結果に影響を与え得る手術の種類や患者の年齢、併存疾患、外科医の経験年数、毎週行う外科手術の数などの変数を制御した上での分析の結果、術後30日間で合併症(死亡を含む)が起きる可能性は、女性患者と男性外科医の組み合わせの場合、女性患者・女性外科医の組み合わせの1.15倍だった。男性患者・男性外科医の組み合わせでは、男性患者・女性外科医の組み合わせと同様だった。
このような差が生じるのはなぜか? 研究チームは原因を特定していないものの、いくつかの仮説を挙げている。その一つは、患者と外科医の性別が異なる場合、医師と患者の関係がそれほど強固ではないという点だ。医師と患者の関係は、女性患者と男性医師の組み合わせで最も問題が生じる。
さらに研究チームは先行研究の結果として、特に男性医師の間で、女性患者が抱える症状の深刻さが過小評価されていることが示唆されていると指摘。一方で、患者も男性医師に対して術後の痛みを報告しない傾向にあることも分かっているとした。
人種をテーマに行われた類似の研究では、医師と患者の人種が同じだった場合に治療の結果が改善することが示唆されている。これも、医師と患者の間の良好な関係が要因である可能性が高い。研究チームは「患者と医師の関係は、性別や人種、民族、その他の個人的な信条や価値観などに基づく共通のアイデンティティーにより強化される」と述べている。患者は、自分と医師が似た人間だと思えると、医師のアドバイスに従う可能性が高くなるのだ。