大人の学びの先にある「シンセサイザー人材」という考え方

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今から約7年前。大企業に勤めていた私は、すっかり学ぶ習慣が抜けていました。

大学を卒業したら、一旦「学び」は終わり。次第に「やらなければいけないこと」に集中し、「やりたいこと」が無意識のうちに遠のいていったのです。責任を果たし、期待に応えれば会社から評価もされるという日常のループがコンフォートゾーンとなり、そこから出ることをしていませんでした。

30歳になって感じたのは、仕事は充実しているものの、自分の成長が止まってしまっている感覚。漠然と意欲はあるけれど、何を目指して学べばいいのか、見いだせていない時期でした。

ミネルバ大学との出会い


そうこうしているうちに、リンダ・グラットン教授の著作『ライフシフト』の初版が世に出され、私はそこに書かれていた「人生100年時代」という言葉に大きな衝撃を受けました。

人の長寿化、テクノロジーの進化によって働き方がダイナミックに変化し、「固定3ステージ(学ぶ・働く・退職する)」から、柔軟に働き続ける「複数のマルチステージ(学ぶ・働く・休む・学ぶ・働く)」へと移行していく。私たちは、マルチステージを見据えて、時には仕事を長期間休んで新しいスキルを身に付け、仕事のジャンルを開拓していくことが必要であり、また社会はそれを許容していかないといけないという内容でした。


リンダ・グラットン教授(Getty Images)

その後、家族の転勤のためにアメリカに渡った私は、心機一転、「これが自分のライフシフトへの一歩だ」と会社を辞め、自分のやりたかった「人の可能性を開花させるような教育」の仕事に取り掛かりました。仕事と言っても、フルタイムでどこかに勤めるのではなく、業務委託を掛け持ちしながら、最先端をいく西海岸の教育メソッドを探究する日々。中には無報酬のものもありました。

そんな中、とある教育カンファレンスでミネルバ大学に出会いました。2017年、完全オンラインで学位を取得する学びについてまだ懐疑的な見方をされる時でしたが、ミネルバはその革新的な教育メソッドが注目され、合格率は2%を切るほどの人気を誇っていました。
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文=植山智恵

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