職場から家庭へ、都市から地方へ。「身体に優しい」働き方改革とは

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18世紀以降の産業革命とは、技術革新に伴う産業構造の変化を指し、主に手工業から工場生産への移行により生産性が向上したと言われています。また、産業の軸が農業から工業に変わった時期でもあり、それにより社会構造も大きく変わりました。

蒸気機関という新たな動力源によって蒸気船や鉄道などの交通網が充実し、地方から都市への移動が楽になり、都市の労働力が確保されました。機械化の流れは農業にも及び、農場経営の大規模化・効率化によって生産量が飛躍的に増え、人口の増加を支え、それが労働力となりました。

僕は「食人」なので、この変化を食の視点から見てみます。まず、都市への移住により、地方ではある程度できていた自給自足が難しくなり、人々は市場や店で食糧を調達することになりました。また、地方の親や家族と離れて暮らすことによって「家の味」は薄れ、伝統料理が伝承されにくくなるという弊害も生まれました。

家庭で過ごす時間が減ると、じっくりと弱火にかけるような調理が難しくなり、素材の味を引き出すものが作りづらくなります。同時期に“精製した塩”が気軽に手に入るようになったことも、家庭の食卓を変えました。それまで、塩は食材の保存などに使用する高価で貴重なものでしたが、料理の“味付け”に利用されるようになり、キッチンでの時間短縮に大きく貢献しました。


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サラリーの語源は、ラテン語で塩を意味する「サール(sal)」であるという説があります。産業革命以前は、労働によって塩を得ていたものが、革命後、塩(使った食)が労働力を支えるものとなりました。その結果、生活習慣病というリスクが大きくなったことは、現代にも続く資本主義の悩みとなっています。

時は流れ、現在は第4次産業革命といわれ、AI、IoT、ブロックチェーンを筆頭にあらゆるデジタル化が進んでいます。そしてそれは、コロナ禍により一気に加速しました。これによる恩恵は、通勤時間の省略、出張や会食の経費節約など働き方だけでなく、家庭での時間を取り戻すことに繋がっています。
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文=松嶋啓介

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