母乳から新型コロナウイルスは感染しない、米大学の論文

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新型コロナウイルスに感染した母親が、母乳を通じてウイルスを赤ちゃんに感染させる恐れはないという研究結果が、1月19日、医学ジャーナルのPediatric Researchに掲載された査読付きの論文で公開された。

これにより、ウイルスに感染後やワクチンの接種後に子どもに母乳を与え続けてもよいとする専門機関の推奨が裏付けられた。

カリフォルニア大学の研究者らが110人の女性のサンプルを分析した結果によると、最近ウイルスに感染した母親のうち、母乳に新型コロナウイルスの原因となる遺伝物質が含まれていた割合はわずかで、6%から9%だったという。

しかし、研究者らは母乳に感染性のウイルスやウイルスの複製を示す遺伝物質が含まれていたことを示す「証拠はない」と述べ、サンプルからウイルスを培養することはできず、遺伝物質は「一時的に存在する」だけだと述べている。

また、新型コロナウイルスに感染した母親から母乳を与えられた乳児が感染したことを示す「臨床的証拠」もなく、「母乳による育児は危険ではないと思われる」と論文の主執筆者のPaul Krogstadは述べている。

この研究は、これまでに行われたこの種の研究の中では最大規模のもので、同様の結果を示した多くの小規模な研究を、「実質的に裏付けるものだ」と研究者らは述べている。また、CDC(米国疾病対策センター)やWHO(世界保健機関)は、母親が母乳での育児を継続することを推奨しているが、これらの推奨が補強されたことになる。

母乳での育児には多くの利点があるが、ごくまれに母乳が病気を媒介する場合もある。母乳は、HIVやヒトT細胞白血病ウイルスの感染経路として知られており、母乳サンプルからエボラウイルスが検出された例もある。

WHOは、新型コロナウイルスに感染した女性が乳児に母乳を与える場合は、マスクを着用し、赤ちゃんに触れる前と後に手を洗うなどの予防策を講じることを求めている。

妊娠中や授乳中の女性のワクチン接種率は平均を大きく下回っているが、これは、混乱した公衆衛生のメッセージや、ワクチン接種が母子またはその両方に害を与えるという根拠のない誤った情報が横行していることが原因だ。

CDCは、授乳中の女性にもワクチンの摂取を推奨しており、ワクチンが母乳に含まれることはないとしている。しかし、母親の抗体が母乳に含まれることで、ウイルスに対するある程度の防御効果が得られるという。

編集=上田裕資

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