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2022.01.19

ギガファクトリーをドイツに展開、テスラの目論見は成功するか

(c) Tesla

欧州の電気自動車(EV)市場で最大のシェアを握り、EVへの移行を世界的にリードするテスラは2021年12月末、ベルリン近郊に建設され、欧州初の製造工場となる「ギガファクトリー」の操業認可に向けた必要書類をすべて提出した。

複数の推計によれば、このギガファクトリーは週あたり1万台、年間では52万台のEVを生産する能力があるという。一部には、2023年におけるテスラの生産台数は200万台超になるとする予測もある。

だが、欧州のグリッド(電力網)は、テスラやフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツなどが公言している増産に対応できるのだろうか? エネルギー危機を受け、EU諸国では、太陽光発電や風力発電の不足を相殺するために石炭と燃料油の消費量が増えており、電気とガスの価格が急騰している。

2021年全体で見ると、ガスの卸売価格は400%を超えて上昇した。ギガファクトリーやその他でのEV生産は、サステナブルで効率的と宣伝されてはいるものの、製造とEV稼働の動力となる大量の電気を間違いなく必要とする。それは、すでに厳しい市場を逼迫させるだろう。

テスラをはじめとするEVメーカーが立ち向かわなければならない問題は、それだけではない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに起因するサプライチェーンのひずみにより、重要な希土類元素(REE)の入手はますます難しくなっており、それがいくつかの原材料や最終製品の入手に影響を与えている。EV生産に欠かせない要素である半導体もそのひとつだ。

欧州におけるテスラの成功と欧州産EV市場全体にとって、最大の脅威になるのはおそらく中国だろう。中国企業は、今回のエネルギー転換の全体を通じて、低価格での生産力で競合他社に優ることをたびたび見せつけてきた。

それは多くの場面で証明されてきたが、おそらく最もあからさまに示しているのが、中国の太陽光パネルのダンピング(不当廉売)問題だろう。このダンピングにより、世界の太陽光発電(PV)設備のコストが著しく低下し、米国の製造業者が米商務省を通じて行動を起こすに至った。米国は2018年にセーフガードを発動し、自国の太陽光発電業界を守ろうと試みた。そうした米国の措置をめぐり、中国は世界貿易機関(WTO)に提訴した。だが、WTOは中国側の主張を退け、米国を支持した(ただし、これまでところ、ほとんど効果は出ていない)。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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