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2022.01.19

吸水型パンツからはじまる、誰もが生きやすい社会

花柄やレースなど、生理用品のデザインは「女性らしさ」を前面に打ち出したものが多い。そんな生理用品の“常識”に挑んだ商品が、吸収型ボクサーパンツ「OPT」だ。液体吸収機能を備え、経血が漏れる不安やナプキンを頻繁に交換する手間を軽減。デザインはメンズボクサー型で「カッコよさ」にこだわった。

商品の企画・販売を手がけるのは、現役サッカー選手の下山田志帆と、元プロサッカー選手の内山穂南が共同代表を務めるRebolt。アスリートとして活躍してきた2人は、生理中でも競技に集中できる生理用品を求めていた。そこで吸収型パンツに目をつけたが、既存の商品は女性らしいデザインのショーツばかりだったという。

「女性らしさを打ち出したものを選ばざるをえないこと自体が苦痛だった。OPTを通じて、奪われてきた選択肢を可視化したかった」(内山)

しかしなぜ、アスリート2人で共同創業する道を選んだのか。きっかけは2018年、イタリアでプレイしていた内山が引退後の進路に悩み相談したのが、当時ドイツでプレイしていた下山田だったのだ。

「海外でプロサッカー選手の職に就いていても、日本では『遊びでやっている』と思われることがある。他人の評価を気にして、自分には社会的な価値がないと悲観的になっていることがお互い悔しかった」(下山田)

下山田はLGBTQ当事者だ。「19年2月に公表すると自信が芽生えた。自分なら、ビジネスを通じて『自分という生き方は誰にも奪われない』と伝えられると感じた」(下山田)。

19年10月に会社を設立し、アスリートの声を反映しながらOPTを開発。21年4月にクラウドファンディングで予約販売を開始すると目標の100万円を大幅に上回る617万円の調達に成功。すでに1300枚を売り上げたという。

二人が目指すのは、LGBTQ当事やアスリートに限らず、誰もが自分らしい生き方を選べる社会。「ブランドを通じて、すべての人の生き方を肯定していきたい」(内山)。


しもやまだ・しほ(左)◎サッカー選手。大学卒業後、独でプレイし2019年に帰国。Reboltに加えスフィーダ世田谷FCでも活動中。
うちやま・ほなみ(右)◎元プロサッカー選手。大学卒業後、伊でのプレイののち、引退し2019年に帰国。下山田とは十文字高校の同級生。

文=瀬戸久美子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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