国際協力を阻む「郷党心」 42カ国1.8万人の実験で浮き彫りに

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活用されていない国際協力の機会


こうした結果は、数年前にWEFが表明した懸念を裏付けるものかもしれない。新型コロナウイルスの流行中は、出入国が厳しく制限される期間が続き、国境を越えた協力が世界の繁栄にとっていかに重要かを忘れてしまいがちだ。最近発表された東フィンランド大学の研究結果では、協力の欠如によって有効活用されないままとなっている大きなポテンシャルがあることが示されている。

例えば、米シアトルとカナダ・バンクーバーを結ぶ国境地域カスカディア地方では、両国の当局が協力関係を推進し、協力を支援する取り組みが多く存在するにもかかわらず、科学や研究開発などの分野での経済協力はほぼなかった。

残念なことに、こうした状況は欧州の国境地帯でも同様だ。スウェーデンとデンマークの国境にあるエーレスンド地域は国際協力の模範例として挙げられることが多いが、同地域でさえも、医療分野など一部の例外を除き、イノベーションによる成果が出ることは比較的少ない。

研究チームは、政策立案者が並べる国際協力の美辞麗句と、明確で具体的な成果という面での現実の間には、大きな隔たりがある場合が多いということが今回の研究で明確に示されたと説明。「EUとロシアの現在の関係と、新型コロナウイルスの流行が、国境を越えた協力関係の持続可能性に試練をもたらしている。現在の水準で協力関係を維持することさえも懸念される」と結論した。

編集=遠藤宗生

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