認知症患者、2050年に世界で1.5億人超に 日本は伸び最低

Andrew Brookes/Getty Images

世界の認知症患者は2019年の約5740万人から2050年には1億5280万人に増えるとの推計を、国際研究チームが科学誌ランセット・パブリック・ヘルスで発表した。中年肥満や喫煙、社会的孤立が主な原因だという。日本でも27%増えるが、研究対象国のなかでは最低の伸びにとどまると予測している。

研究によると、2050年時点の認知症患者数は、教育の向上によって620万人減るものの肥満や高血糖、喫煙によって680万人増える見通しとなっている。研究チームはこのほか、高血圧、うつ、運動不足、糖尿病、過度の飲酒、頭部外傷、大気汚染へのばく露、低教育歴なども認知症のリスク要因に挙げている。

認知症患者はすべての国で増えると予想されており、最も高い伸び率となりそうなのはカタールで1926%。米国では99.67%増える見通しとなっている。

研究チームによると、高齢者人口の増加だけで2050年の認知症患者は117%増えると推定され、この影響はとくに東アジアでもっとも深刻になるとみられる。

研究論文の筆頭著者であるワシントン大学保健指標評価研究所の研究者、エマ・ニコルズは英紙ガーディアンに、政策立案者は認知症のリスクを減らすために、運動や健康的な食事、禁煙を奨励する低コストのプログラムを支援していく必要があると述べている。

一般に進行性の病気である認知症では、加齢によって通常起こるとされる以上に記憶や判断力などが損なわれる。世界保健機関(WHO)によれば、アルツハイマー病や脳卒中をきっかけに発症することもあるが、加齢の必然的な結果ではない。

2020年にランセットに発表された研究では、低教育歴も認知症のリスク要因になりうることが示されている。保健教育の向上は、頭部外傷や過度の飲酒などのリスクを低下させることに役立つからだ。

WHOは、認知症の治療には世界全体で年間8180億ドル(約93兆6000億円)かかっていると試算している。

編集=江戸伸禎

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