ビジネス

2022.01.15

「何もない」を武器に、鳥取の山奥で県人口を超える村づくりに挑む


思考停止せずに打席数を増やす


基盤となる鶏卵業が成長しても思考停止することなく、しっかりと世の中のトレンドも分析しながら、投資余力が出れば新しいことに投資をし、バッターボックスでの打席数を増やした。当然ながら失敗もある。だが、そのなかで見事、ヒットにつながる道を見つけている。事業はひとつうまくいくと、ついつい現状に甘んじ停滞してしまう。知らずにゆでガエルのごとく衰退に陥るということは、地方も都会も同様に往々にしてあることだが、しっかりスイングをし続けたという話には私も感銘を受けた。

また、小原氏の地元に対するビジョンが、同じ思いを抱く周りの人をワクワクさせたことも大きいだろう。「大江ノ郷自然牧場を、県の人口を超える人数が訪れる場にしたい。そうすれば、この町が地域活性の大きなハブになる」と目の前で目標を語ってくれたが、このビジョンに魅力を感じる人は多い。小原氏は、行政や民間企業も巻き込んで味方を増やし、廃校をホテルに改装するなど自社だけでは難しい総合的な体験構築を仕掛けることにも成功している。

日本中至る所で、地域を盛り上げたいという動きがある。どの地域もヒットコンテンツを模索しており、なかでも「自然を活かす」という発想は多くの地域で耳にする。最初は小さくても取れるリスク余力を満額使い続け、ビジョンを諦めずに発信し、応援者を見つける大江ノ郷自然牧場の姿勢は、全国の地方を勇気づける事例だと思う。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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