2019年における香港の抗議活動に火をつけたのは、当時発議されていた法案だ。この法律は、中国が香港の市民を送還し、中国本土で裁けるようにすることを狙ったもので、香港における人権と民主主義に対する攻撃のひとつだった。
声高な反対にもかかわらず法案は可決され、その後、反対した多くの人たちを狙い撃ちするために利用されてきた。続く数カ月のあいだに、香港の中心的な民主派活動家数名が、2019年のデモ後の不法集会に関して有罪判決を受けた。
違法な抗議活動を組織したとして有罪になった人物のひとりが、黎智英(ジミー・ライ)だ。香港の独立系新聞「リンゴ日報(Apple Daily)」の経営者で民主派活動家でもあるライは、複数回の逮捕を経て、物議を醸した香港国家安全維持法にもとづき、「外国勢力と共謀および結託し、国家の安全を危険にさらした」罪で起訴された。
リンゴ日報は、最終的に2021年6月に廃刊になった。それに先立ち、リンゴ日報、リンゴ日報印刷(Apple Daily Printing)、AD Internetの資産が凍結されたほか、本社が警察による家宅捜索を受け、複数人が逮捕されていた。これは、香港における報道の自由に対する攻撃の手はじめにすぎなかった。
2021年12月末、香港の報道の自由に対する新たな攻撃に、世界はまたもや衝撃を受けた。今回は、香港に残されていた数少ない民主派メディアのひとつ、「立場新聞(スタンド・ニュース)」の発刊停止だった。
香港警察は、「扇動的な出版物の発行を共謀した」として、立場新聞で働く複数名のジャーナリストと、香港の民主派活動家デニス・ホーおよび呉靄儀(マーガレット・ング)を逮捕した。その後、編集担当幹部2人が、扇動的な出版物発行を共謀した罪で起訴された。