「やってみせる」ことなくして、リーダーシップは発揮できない
これは、私の痛恨の失敗から学んだことです。
入社2年目のときに、タイ・ブリヂストンでタイ人従業員に在庫管理の適正化を求めて、強烈な反発を食らって工場機能が停止しかける事件を起こしたときです。あのとき、私自身が“悪代官”のようになっていました。現場のことを何も知らないのに、「在庫管理をちゃんとしろ」と一方的に要求してしまったからです。タイ人従業員たちは、心のなかで「OKY」と思ったはずです。だからこそ、私に強い反発を示したのです。
一緒に汗をかくことで仲間に入れてもらわなければ、何も始まらない。そう思った私は、現場に飛び込みました。最初は見習いのようなもの。タイ人従業員にあれこれ指示されながら走り回るほかありませんでした。しかし、だんだん手順を覚えてくると、そこには細かい問題が山のようにあることに気づくようになりました。
たとえば在庫管理票。
タイヤの種類ごとに、在庫管理票に入荷数と出荷数を記入していくわけですが、これが非常に杜撰だった。字が汚くて何と書いてあるかわからないような状態だったのです。それもそのはず。在庫管理票はペラ紙。その上部を棚にセロテープで止めているだけだから、記入するときにはデコボコしたタイヤや手の平を下敷きにするほかない。判読可能な字を書くのが難しいのも当然だったのです。
そこで、解決策を考えました。
在庫管理票の下に板を貼り付けるようにしたのです。こうすれば、字が綺麗に書ける。しかも、ササッと書けるからストレスも感じません。こうして、個別具体的な問題を解決してみせたとき、はじめて彼らの私を見る目が変わったのを感じました。
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そのほかにも、問題点に気づくと、それを一つひとつ解決していきました。すると、仕事もラクになるし、在庫管理もうまくいき始める。こうなると、現場が盛り上がり始めます。そして、タイ人従業員たちも「お前、なかなかやるな! お前の言うことを聞いたほうがよさそうだ」という対応に変わってくる。こう思ってもらえたとき、はじめて私は未熟ながらもリーダーシップを発揮できるようになったのです。