「結果を出せ」という言葉、本社役員の重層構造、多くの会社が持つピラミッド型組織図──。これらに異論を唱え、「部下の自尊心を傷つけない」「世界を臆病な目で見つめる」など、眼から鱗の知恵を詰めた「リーダーシップの教科書」とも言える一冊だ。
「世界でも通用する、真に優れたリーダー」となり、「最強のチーム」を生むにはどうすればよいのか。以下、本書からの一部抜粋も交えた著者の言葉を、ダイヤモンド・オンラインからの転載で紹介する。
現場に「OKY」と思われたら、リーダーは失格である
「結果を出せ」
リーダーが現場に対して、よく投げかける言葉です。
もちろん、結果を出してはじめて「仕事をした」と言えるのですから、いわんとすることは間違ってはいない。しかし、このモノの言い方に、私は強い違和感をもちます。なぜなら、誰でも言える言葉だからです。
現場に目標を与えて、それを達成しているか否かを管理する。そして、達成していなければ、「結果を出せ」とプレッシャーをかける。それだけなら誰でもできる。誰にでもできることしかやらないで、「結果を出せ」と命令するのはおかしいと思うのです。
Getty Images
「OKY」。これは、私が、それなりの職位に就いた後に、現場のスタッフから聞かされて、強い印象とともに記憶に刻み込まれた言葉です。彼は、本社から「結果を出せ」とプレッシャーを受けていることを明かしたうえで、この言葉を口にしたのです。「お前が来てやってみろ」。頭文字をとって「OKY」というわけです。
目標を達成できていないことなど、現場もわかっている。なんとかしようと思って、一生懸命に働いているわけです。にもかかわらず、解決策のひとつも示さずに、「結果を出せ」と迫る。だったら、「お前が来てやってみろ」と言いたくもなります。それが現場の本音だということを、改めて印象づけられたのです。
そして、こう思われた瞬間に、リーダーは“悪代官”に堕します。
汗水たらして働いている現場からすれば、居心地のいい温室にいながら、「結果を出せ」と油を搾るごとくに迫るのは、現場に圧政を強いる“悪代官”にしか見えないのです。それでは、誰も本気でついていこうなどと思うはずがありません。さらに、現場から遠い本社部門に“悪代官=役員”が重層構造で過剰に存在していれば、それが“動かしがたい分厚い壁”のように感じられます。これが、実働部隊たる現場の諦めムードを生み、組織全体をレームダック(死に体)に陥らせてしまうのです。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」。旧日本軍の連合艦隊司令長官・山本五十六の有名な言葉にあるように、何よりも、まず「やってみせる」ことができなければ、人は動きません。リーダーシップの原点は「やってみせる」ことにあるのです。