ライフスタイル

2022.01.21 08:30

バリケードを投票者登録ブースに。投票率を上げたシカゴ市の英断

City of Chicago - Boards of Change (case study)より

City of Chicago - Boards of Change (case study)より

2020年11月3日に行われたアメリカ大統領選選挙の5カ月前、5月25日のアメリカの黒人男性ジョージ・フロイド氏の死をきっかけとして、アメリカ全土に人権保護を訴える「Black Lives Matter」運動が拡がり、一部では街頭での暴徒化も見られた。
advertisement

シカゴ市も例外ではなく、商店や家庭は、破壊から守るため、窓などをボード(合板)で覆った。ほどなく騒動が収まると、そうした合板はアーティストたちのキャンバスとなり、さまざまなビジュアルやメッセージが書き込まれたという。

今回は、この合板を利用して大統領選投票のための登録所を市内の各所に設置した、シカゴ市による価値ある企画をご紹介しよう。

シカゴ市は過去最高の投票者数を達成


在シカゴ日本国総領事館のウェブサイトによれば、シカゴ市の現在の人口比率は、白人が36.5%、アフリカ系アメリカ人が35.3%で、後者にアジア系の4.9%を加えれば41.4%となり、白人を超える。
advertisement

しかし、自分たちが投票しても世の中は変わらないという無力感から、これまでの選挙ではアフリカ系アメリカ人や有色人種の人たちの投票率は低かった。米国大統領選では、投票する時に事前の登録が必要なため、この登録さえしない人が多数を占める。

そこでシカゴ市が投票率アップのために、前大統領夫人ミッシェル・オバマ氏らが共同で立ち上げた選挙権利団体「When We All Vote」とともに行った企画が、「BOARDS OF CHANGE(変革の合板)」だった。

この企画は、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つカンヌライオンズ2020~2021のメディア部門で、グランプリを受賞した。


City of Chicago - Boards of Change (case study)より

さまざまなビジュアルやメッセージが描かれた、騒動から守るために用意された使用済の合板を使って、選挙事前登録のためのブースをつくり、アフリカ系アメリカ人居住地域を中心に、市内の各所に設置したのだ。ブースでは、スマートフォンで簡単に事前登録ができるようにもした。

この登録所はとても目立った。さらに、登録と投票を促す屋外看板も多数設置されたという。また、2019年5月に就任したシカゴ市長はロリ・ライトフットというアフリカ系の女性で、この企画を積極的に推し進め、熱い演説を繰り広げた。
次ページ > 投票所ではなく登録所

文=佐藤達郎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事