なぜ運動をすると頭が良くなるのか?
昔のドラマや漫画などの登場人物には「頭がよいけれど運動が苦手」、あるいは「運動は得意だけれど勉強は苦手」といったステレオタイプのキャラクターがいた。以前は運動と頭の良さは対極にあるもので、関連性があるとは考えられていなかったからだ。しかし、研究が進んだ今は違う。
「ある脳科学者が『我々は首から下を忘れていた』という意味のことを言っています。人間の脳が他の動物に比べて複雑で大きくなったのはなぜなのかというと、それは体を動かすためだと言うんですね。要は体を動かすことによって脳は発達してきたということです」(木村氏)
脳が先にあったのではなく、体のために脳が発達したということだ。実際、最近の脳科学の分野では脳を知るために体の動きを調べるといった研究も行われているという。
「記憶力には脳の海馬という部分が深く関わっていますが、有酸素運動をして適度に心拍数が上がると海馬の血流がよくなって、記憶力が上がるという研究データがあるそうです」(木村氏)
panitanphoto / Shutterstock.com
脳の力を目覚めさせるには、どんな運動が効果的?
では、具体的に脳にいい運動とはどんなものなのだろうか? 脳の力を目覚めさせるというくらいだから、さぞや高度な運動なのだろうと思って木村氏の著書を見ると、その意外なまでに単純な動きに驚かされる。著書では最初に9つのパーツ体操を推奨しているのだが、ここでは2つを具体的に紹介しよう。
【パーツ01:手】手ワーク
「手をグーで握ってパーで開く」を4~5回くり返す。その後は手を開いた状態から指を1本ずつ閉じていき、全部閉じたら今度は1本ずつ開いていく。
たったこれだけだ。道具も広い場所も必要ないので、今すぐこの記事を読みながらできそうだ。
写真提供:『5歳からの最新! キッズ・トレーニング』(木村匡宏/KADOKAWA)
【パーツ02:肘】肘ゆすり
足は肩幅くらいに広げて立つ。肘から下を動かすようにしてゆする。
写真提供:『5歳からの最新! キッズ・トレーニング』(木村匡宏/KADOKAWA)
このように一見すると拍子抜けするほど単純な動きばかりだが、ひとつひとつの動きにはそれぞれ意味がある。
例えば、手をパーにすると、身体全体の伸筋にスイッチが入るそうだ。伸筋とは、よい姿勢を作る時や関節を伸ばす時に働く筋肉なので、どんな運動をするにしても重要な動きになる。また、手と脳は密接に繋がっていて、何かを感じ取る力をつけるためにも、手の運動は欠かせない。
この意味を知った上で体を動かすと、体の関節やパーツのそれぞれの特徴を理解し、体を正しく使えるようになるのだ。