カメラマンが語る、北京五輪で「混乱」した3つの現場

Photo by YUTAKA/AFLO SPORT

日本選手団が史上最多18個のメダルを獲得して、幕を閉じた北京冬季オリンピック。

コロナ禍、外交ボイコット、人権問題などによるいつもとは違った緊張の中で開幕を迎えたが、大会中にも審判の判定や採点をめぐる騒動やフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手のドーピングの問題など、いろいろな出来事が起こった。

今大会、JOC(日本オリンピック委員会)の公式フォトチームとして現地入りし、日本人アスリートが出場した全競技の撮影を行ったアフロの現地デスクを務めた高橋誠氏が、「混乱した現場」を3件選び、写真でレポートする。

「混乱現場」まずは番外編から──

混乱現場として、競技に関係しない所で思いついたのは、なんといってもグッズ売り場です。大会公式マスコットの「ビンドゥンドゥン」がとにかく大人気で、ショップに集まった人々の長蛇の列は今大会1、2を争うほどでした。

開幕前の評判はそれほどでもなかったように思うのですが、競技が始まると、ぬいぐるみが選手たちとともに表彰台に上ったり、着ぐるみが会場内の盛り上げに登場したりして、日に日に存在感を増してきました。

192元(約3500円)するぬいぐるみがよく売れていました。春節の休みと重なってなかなか再入荷されなかったのも、騒ぎになった原因の一つのようでした。



1. 羽生結弦選手の単独記者会見


では、競技に関連する「混乱現場」の1件目。まずは、パンダの帽子をかぶった姿が「ゆづドゥンドゥン」と話題になったフィギュアスケートの羽生結弦選手を挙げます。4回転半ジャンプにも果敢に挑戦して4位入賞を果たしたフリー演技の後、2月14日に急遽開かれることになった単独記者会見の時です。

メダリスト以外の記者会見は予定になく、13日の案内をめぐって様々な憶測が流れたため、JOCはその後、取材依頼が殺到したので実施を決めたとの追加説明を行い、憶測による報道を控えるよう呼びかける一幕もありました。

会見は、メインメディアセンターの中でも一番大きな会場で行われましたが、おそらく今大会最多の報道陣が詰めかけたのではないでしょうか。そして、ボランティアなどスマホを手にした多くの人に囲まれながら、彼は登場しました。

これほどの人集りができるのはやはり特別なことで、その人気ぶりはメディアセンターで毎日配布されたオリンピック新聞からも見てとれました。一面を飾り、特集されたのは、僕たちが知る限りで、日本人では羽生選手だけだったかと思います。

そんな「スター」が、会見で今後の目標を聞かれた時に「正直混乱している」と残したコメントも印象的でした。

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編集=宇藤智子

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