コロナ禍は経済・社会に大きなダメージを与えたが、同時に大きなビジネスチャンスをもたらした。世界中の人々や企業が新しい行動様式への対応を迫られ、同時にこれまで常識とされていた慣習や仕組みを見直すきっかけとなったからだ。あらゆる産業で、コロナ後の持続的な成長を図るためのアップデートが行われている。
世界的なパラダイムシフトが起きているいまこそ、未来の担い手である若き起業家にフォーカスし、日本版スタートアップ・エコシステムの発展を加速させるべきだ。その思いで、Forbes JAPANは創業3年目以内のスタートアップ起業家・経営陣を応援するプロジェクト「Rising Star」の21年版を始動した。
2021年7月1日には、今年で3回目となるピッチイベントを開催。イベントはYou Tubeアカウントからライブ配信を行い、過去最多の1300人以上が視聴する盛り上がりをみせた。
Rising Starのピッチイベントは、本誌主催「日本の起業家ランキング」への登竜門に位置づけられる。今年は159人の起業家が参加登録し、事前審査を経てアスエネの西和田浩平、emolの千頭沙織、TERASSの江口亮介、Pale Blueの浅川純、yupの阪井優の5人を選出。
ピッチでは、「起業家の志、理念の高さ」「ビジネスの革新性、社会的インパクト」「起業家と経営チームの成熟度」「これまでの実績」の4点を軸に、スタートアップ起業家としての総合的なポテンシャルを評価し、2人を「Rising Star Award」として表彰した。
審査員は、Forbes JAPANが毎年行っている「JAPAN’s MIDAS LIST(日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング)」で過去に1位に輝いた高宮慎一(グロービス・キャピタル・パートナーズ)、村田祐介(インキュベイトファンド)、加藤由紀子(SBIインベストメント)が務めた。
yupの阪井優氏
ピッチイベントが例年以上に注目されたことは、コロナ後の社会をけん引していくスタートアップへの期待が高まっていることと無関係ではないだろう。実際、国内スタートアップの資金調達環境は良好だ。INITIALの調査によると、21年上半期の国内スタートアップ資金調達総額は3245億円。17年の年間調達額に迫る規模であり、半期ベースでは過去最高を記録している。また、1社あたりの資金調達額も伸びており、20年は中央値が1億円だった。
興味深いのは、「調達額の大型化は、投資家の参加数が増えるレイターステージだけでなく、創業初期のシード・アーリーのスタートアップにも共通している傾向」(森敦子・INITIAL執行役員シニアアナリスト)ということだ。20年のシード・アーリー選好ファンドの総額は1180億円と、15年比で4倍近くに増大。21年には、DNX Venturesのシード特化ファンドやTHE SEED、NOWの2号ファンドなどが立ち上がった。