仏南部で確認のコロナ変異株「IHU」、WHOは低リスクと評価か

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フランス南部で昨年11月4日に初めて確認された新型コロナウイルスの変異株「IHU」について、世界保健機関(WHO)は1月4日、現時点ではそれほど警戒すべきものではないと見ていることを明らかにした。

この変異株(B.1.640.2)は、最初に検出したマルセイユの地中海感染症大学病院研究所(IHU)の名を取り「IHU」と呼ばれている。感染力が非常に強く、感染者を急増させている「オミクロン株」と同様に、変異が見られる部分が非常に多い(46カ所の変異が確認されている)ことが特徴だ。

昨年12月29日、IHUの研究者らが査読前論文を公開するサイト「medRxiv(メドアーカイブ)」に発表した論文によると、IHUはカメルーンへの渡航歴がある感染者から検出された。ただ、今のところはその感染力や引き起こす症状などについて、判断できる段階にないという。

さらに、昨年11月以降、IHU株を監視しているWHOは、この変異株が20人を超えて感染を広げていることを示す証拠はほとんど得られていないと明らかにしている。

IHUは「異端」?


IHUのディディエ・ラウール所長は、一匹狼的なアプローチでしばしば議論を引き起こしてきた。2020年には、それを裏付ける証拠が乏しいにもかかわらず、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に100%有効な治療薬だと主張した。

これを受け、欧州議会のダニエル・コーン・ベンディット議員はラウールに対し、「黙って医師として働け」と述べ、自分を天才のように宣伝するのをやめるようにと促した。

一方、ドナルド・トランプ前米大統領は、ヒドロキシクロロキンは「奇跡の治療薬」だと断言。米国の医師らを失望させた。この薬については、精神症状が生じたり、心臓に影響を受けたりするなどの副作用の危険性が警告されている。

ウイルスは変異でどう変わる?


ウイルスが変異により、どのようなものになるかを予測するのは難しい。オミクロン株は感染力が非常に強くなったほか、その構造の変化から、抗体治療薬の一部は有効性をほぼ失っている。

研究者らによると、デルタ株などこれまでに確認された変異株は、感染した場合に重症化する危険性が高まっていたものの、一般にはウイルスは、変異によって感染力が強まるのと同時に、命を脅かすようなものではなくなる場合が多いとされる。

すでにいくつかの研究により、オミクロン株はこのパターンに従ったものである可能性が示されている。つまり、感染者は増加する一方、感染者が重症化する危険性は低下しているということだ。

編集=木内涼子

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