──ビジネスを行う上での哲学を教えてください。
3つあります。1つは、私のテーマであるウェルネスを、意識的に時々やるものではなく、気がついたらそんな行動をしてしまっているような“ライフスタイル”にしていくこと。
2つめは、「最大」ではなく「ベスト」を目指すこと。規模を大きくすることが地域の人々の生活や環境を害するものであれば、その選択はしません。誰と一緒に働くのであれ、ビジネスパートナーやスタッフ、地域を包み込むようなリゾートでありたいと考えています。
3つめは、有機的な成長です。私たちの仕事には、多くの利害関係者がいます。お客様、スタッフ、株主だけでなく、地域も重要な要素です。ビジネスが成功したら、すべての利害関係者に対してお返しをしたい。オーナーだけが金持ちで、地域が貧しいということは、あってはならないこと。そのギャップを狭めたいです。
──なぜこの3つの考えに至ったのですか?
私は元々、銀行員でした。仕事を通して、銀行に行くことすらできない人たちがいることに気付きました。その人たちに、豊かさを届けたいと思ったのです。健康に対する知識は、金銭に勝る、何よりの財産だと考えています。
──誰もとりこぼさず、地域と共に豊かになっていく、というのは大切なことですね。さて、カタールにオープンする「ズラル・ウェルネス・リゾート by チバソム」ですが、コロナ禍はプロジェクトに影響を与えましたか?
このプロジェクトのアイデアはコロナ禍のずっと前からありましたが、オーナーと私たちがビジョンを共有できるかをきちんと確認してから始動したので、時間がかかりました。コロナ禍で減速するかと思いましたが、逆に人々が健康について関心を持つようになったので、アクセルがかかったということができるでしょう。
ハイドロセラピーを行うプールエリア
──なぜカタールを選んだのでしょうか?
今回のパートナーであるミシェルプロパティと、「地域から世界にウェルネスの考えを広める」という理念を共有できたことが大きいです。
それに、カタールには元々素晴らしいマングローブの林があり、中東やアメリカから多くの観光客が訪れ、ホスピタリティも洗練されている。ポテンシャルがあると考えました。
──どんな地域からのゲストを期待しますか?
今のところは近隣の各国、特にターゲットにしているのはサウジアラビアです。ズラルは中東に多い家族連れ客を想定してつくっています。そして、状況が落ち着けば世界から。特に北米やヨーロッパからは、タイのチバソムよりもカタールの方がアクセスがいい。週末やちょっとした連休でも来られる距離感です。また、同じイスラム教国のインドネシアの人たちも、親和性を感じてくれるのではないかと思います。