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2022.01.26

グローバルヘルスを革新する日本発の官民イニシアチブ

日本発の国際的な官民ファンドである公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund。以下、GHIT)がグローバルヘルスの課題解決やSDGsの実現に向けてどのような役割を担い、活動しているのかを、感染症の新薬開発に取り組む専門家との対話を通じて紹介する本連載。

第2回目となる今回は、GHITの資金拠出パートナーであるビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)日本常駐代表の柏倉美保子に、GHITとの取り組みとグローバルヘルス推進における日本の役割について話を聞いた。


浦辺隼(以下、浦辺):ゲイツ財団は長年にわたって、途上国の疾病に対する支援をはじめとするグローバルヘルスに力を入れてきました。ゲイツ財団がグローバルヘルスに力を入れる理由を教えていただけますか。

柏倉美保子(以下、柏倉):ゲイツ財団は“All Lives Have Equal Value”(すべての生命の価値は等しい)という信念の下、飢餓と貧困の撲滅を目標に、主に低・中所得国の人々が健康に暮らせるように取り組みを行っています。

グローバルヘルスは投資効果が高く、インパクトも数値化しやすい分野です。そのため、ゲイツ財団はGHITをはじめ世界各国の政府や国際機関、NGO(非政府組織)、民間企業などあらゆるセクターと連携しながら革新的なモデルをつくり、資金やリソースを投入することで最大限のインパクトを出すことに力を入れています。日本のような先進国の技術力やイノベーション力を生かして、途上国に最先端の医療を届けるのがゲイツ財団の役割だと考えています。

一例を挙げると、2000年に途上国のワクチン接種を推進する国際組織「Gaviワクチンアライアンス(Gavi)」を設立しました。Gaviによって、低所得国は各製薬企業とワクチンの価格交渉を直接する必要がなくなり、製薬企業も大きな市場が形成されたことで製品開発(R&D)の意欲が高まり、結果的にワクチン1本あたりの価格を銘柄によっては37%も下げることができました。

浦辺:アライアンスに対して資金を提供し、コーディネーターの役割を担うことでレバレッジをかけるというのは投資の観点から見ても重要だと思います。新型コロナウイルスによって感染症への関心が高まっていますが、パンデミック後のグローバルヘルスを取り巻く状況はどのように捉えていますか。

柏倉:IMF(国際通貨基金)が21年10月に出した予測では、ウィズ・コロナの状態が26年まで続くと、全世界で5.3兆ドルの経済損失が出るとされています。また、低・中所得国にワクチン、治療やコロナ検査キットを届けられない状態が続き、医療を取り巻く格差が継続すれば、本来避けられたはずの500万人以上の死者が出るとの予測もあります。

ウイルスは国境を超えて広がり、ワクチンを接種していない地域で変異し続けます。パンデミックを収束させるには、自分や自国の利益だけではなく低・中所得国などへの利他の精神が不可欠です。

一方で、コロナ以前から世界にはHIV、結核、マラリアという3大感染症で亡くなる方が年間250万人以上いました。また、2020年までは世界の貧困率も順調に減っていましたが、コロナでこの歩みが逆戻りしてしまいました。コロナだけでなく、低・中所得国のグローバルヘルス全般において利他的な行動を取ることができるかどうかがいま、人類に問われています。


柏倉美保子 ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本常駐代表

ゲイツ財団がGHITにパートナーとして参画した理由


浦辺:ゲイツ財団には12年のGHIT設立当初から評議会や理事会、選考委員会などを通じて資金のみならず多くの助言や具体的なサポートをいただいています。GHITにパートナーとして参画された理由や経緯をあらためてお聞かせいただけますか。

柏倉:ゲイツ財団はもともと、日本の製薬会社や民間企業がもつ高い技術力やイノベーションの力を、顧みられない感染症の新薬開発にどう生かせるかに大きな関心を寄せていました。

そんななか、11年9月に元ゲイツ財団グローバルヘルスプログラム・プレジデントで武田薬品工業のチーフ・サイエンティフィック&メディカル・オフィサーを務めていた故・山田忠孝さんと、エーザイでグローバルアクセスストラテジー・ディレクターだったB.T.スリングスビーさんが昼食の席で、日本の製薬企業、ゲイツ財団、日本政府が連携してグローバルヘルスのためのR&Dを推進するファンドのアイデアを着想しました。

当時、グローバルヘルスのR&Dに特化した官民連携ファンドをつくるというコンセプトは世界初でした。このモデルの正しさや素晴らしさを証明するために、ゲイツ財団はGHIT設立の時点からパートナーとしてかかわってきたのです。

浦辺:民間企業とゲイツ財団が拠出した資金に対して日本政府もマッチングして、成果をレバレッジするというのは日本独自の革新的なモデルでした。GHITとの取り組みのなかで、特に印象に残っていることはありますか。

柏倉:GHITを参考に、他国でもグローバルヘルスのファンドが生まれたことです。例えば、韓国では世界の保健衛生の向上を目指す「RIGHT Fund」が誕生しましたし、ヨーロッパでもGHITを参考にしたいという国がいくつもあります。ゲイツ財団としては、同様のモデルが世界各国で展開されることを期待しています。そしてこのモデルの先駆者であるGHITを継続してサポートしていきたいと思っています。

浦辺:GHITのビジネスモデルは、グローバルヘルスだけではなく環境問題などさまざまな課題を解決するモデルとしても使えると考えています。

さまざまな活動を展開されているゲイツ財団ですが、GHITと連携する意義はどこにあるとお考えですか。

柏倉:GHITはSDGsのターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する」にともに取り組む重要なパートナーです。ゲイツ財団が直接関わってこられなかった日本企業にGHITがアプローチしてくれるからこそ、日本の新薬開発の技術が世界への貢献を可能にする道筋ができました。GHITの活動こそがSDGsの達成につながると考えています。

GHITの素晴らしいところは、全日本空輸(ANA)やセールスフォース・ドットコムなど、グローバルヘルスと直接関わりがなかった民間企業もステークホルダーになっている点です。グローバルヘルスの課題解決において、国境を越えて産官学が連携するモデルにこそ可能性があるということをGHITは証明していると思います。


浦辺 隼 投資戦略 兼 ポートフォリオディベロップメント & イノベーションズ シニアディレクター

日本政府はグローバルヘルスの重要な局面でリーダーシップを取ってきた


浦辺:グローバルヘルスは地球全体の課題ですが、ゲイツ財団が日本政府とともに取り組みたいことはありますか。

柏倉:まず、日本政府が果たしてきた役割が日本国内であまり知られていないことを残念に思っています。

2020年に、新型コロナウイルスワクチンを共同購入し、途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX」が発足しました。COVAXは唯一、低・中所得国もワクチンを受け取ることができるスキームで、Gaviも連携しています。COVAXには現時点で180以上の国・地域が参加していますが、実は、この枠組みを応援しようと最初に手を挙げたのが日本政府でした。

21年6月には日本政府とGaviの共催でCOVAXワクチン・サミット(AMC増資首脳会合)を開催し、低所得国の人口の約30%相当分のワクチンを確保するための資金を集めることができました。国際協調の大きな流れをつくったのは日本だと私は思います。

浦辺:日本政府は、これまでにもグローバルヘルスの重要な局面でリーダーシップを取ってきました。1998年には橋本龍太郎首相(当時)がG8(主要8カ国首脳会議)の席で、G8各国が世界の寄生虫対策に取り組む必要性を宣言しましたし、2015年には安倍晋三首相(当時)が、SDGsが採択されて初となる保健分野での大規模な国際会議を日本で開催しました。

柏倉:すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することをユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と言いますが、日本政府は国民皆保険制度など社会保障の仕組みを築き上げてきた経験を生かして、長年にわたって低・中所得国のUHCを推進してきました。

日本は、地球社会全体で見たときにいちばん必要なところに力を入れるという多国間主義を貫いてきた国のひとつです。ゲイツ財団も多国間主義を推進していて、日本政府とは価値観を共有していると思っています。

浦辺:これからのGHITに期待することはありますか。

柏倉:GHITのこれまでの成果が、グローバルヘルス分野における日本の研究開発の功績そのものです。今後も効果測定が可能な形でGHITの価値を示し、存在感を高めていただきたいと思います。

浦辺:ありがとうございます。21年11月にGHITが9年間支援してきた住血吸虫症小児用治療薬「アラプラジカンテル」の第III相試験(*)が完了し、有効性・安全性ともに良好な結果を得ることができました。引き続き、さまざまなステークホルダーを巻き込みながら低・中所得国の顧みられない感染症に向けたイノベーティブな製品開発を推進していきます。また、GHITはこれからもUNDP(国連開発計画)との連携を通じて、製品開発からUHCにつなぐ取り組みを進めていきたいと考えています。

柏倉:ゲイツ財団の活動をしていると、Z世代など若い人たちの社会課題に対する関心が高まっていると感じます。Z世代こそ、これからの日本を牽引する人たちです。世界をよくしたいという思いがある人には、小さくても具体的なアクションを取ってほしいと願っています。

浦辺:GHITにも時々、高校生や大学生からインターンシップの問い合わせをいただきます。世代や国境を越えたグローバルな取り組みを広げていくことは我々の責務のひとつです。ぜひ、若い世代の人たちとのつながりも深めていきたいと思います。

(*)多数の対象患者で実施し、総合的な有効性・安全性の検証を行う試験のこと。
厚生労働省資料p.4 Taro-03.01資料3カバーVer2.jtd (mhlw.go.jp)


公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)
日本政府(外務省、厚生労働省)、製薬企業などの民間企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム、国連開発計画が参画する国際的な官民ファンドです。日本の製薬企業、大学、研究機関と、海外の機関との連携と共同研究を促進し、低中所得国で蔓延するマラリア・結核・顧みられない熱帯病向けの製品開発への投資、ポートフォリオ・マネジメントを行っています。
https://www.ghitfund.org/jp


かしわくら・みほこ◎ビル&メリンダ・ゲイツ財団 日本常駐代表
慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクールでMBA、世界経済フォーラムでグローバル・リーダーシップ・フェローのエグゼクティブ・マスターを取得。2013年から世界経済フォーラム日本事務所初の職員として地域戦略を担当し、多くの地球規模課題のアジェンダ形成に携わる。17年7月より現職。途上国の保健医療分野等の課題に対して日本からのソリューションを最大限増やす役割を担い、日本政府、企業、市民社会、研究機関との連携を深めてきた。週末はボランティア活動やお琴と笙を嗜む。ベジタリアン。

うらべ・はやと◎投資戦略 兼 ポートフォリオディベロップメント & イノベーションズ シニアディレクター
GHIT Fundの全投資案件の投資戦略、進捗管理を統括及び新技術探索業務も行う。前職のシリコンバレーのInnovation Core SEI, Inc.社では、自動運転、エネルギー、ライフサイエンス、水処理関連事業の戦略立案、起業の投資分析等を行い、Synthetic Genomics社ではニュートリジェノミクスやバイオ燃料の関連の業務に携わる。2016年より現職。ブラウン大学にて起業工学の修士号、医療工学の博士号(PhD)を取得。また、カリフォルニア大学サンディエゴ校国際政策・戦略研究大学院にて修士号(MPIA)を取得。好きなものはテニスと塩豆大福。

Promoted by GHIT Fund / text by Hiro Matsukata / photographs by Masahiro Miki

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