ウォール街発の「ロボット採用」企業 Untapt社が狙う“人材革命”

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グーグルやフェイスブックで働くことがどのようなものか、エンジニアは皆知っているが、金融テクノロジーの分野で何が起こっているのかを理解している人はあまりいない。

エド・ドナーはメガバンク、JMモルガン・チェースに10年余り務め、大規模な技術プロジェクトを推進してきた。彼は複雑な電子取引システムやリスク計算を担当していたが、最も骨が折れる仕事は「エンジニアの採用だった」という。

「IT系の人材の採用難はいつものことだが、特にずば抜けて需要のある金融サービスや金融技術の分野で顕著だ。これらの分野では常にイノベーションが起こっており、テクノロジー系の人材を常に探している」

ドナーは、テック系人材と金融サービス企業のマッチングを図る人材募集プラットフォーム、「Untapt(アンタップト)」を2013年10月に設立した。同サービスは今年の2月に正式にローンチし、新たに300万ドルの資金を調達。6,500人のエンジニアがプラットフォームを利用し、40社以上の依頼主企業から求人がある。ドナーは同社の急拡大を期待している。

フォーブスはUntapt創業者のドナーおよび共同設立者のジェフ・マッサム(元ドイツ銀行CIO)にインタビューを行った。

--自動化された人材募集プラットフォームとは、どのようなものですか?

求職者や求人企業をUntaptのプラットフォームに呼び込み、マッチングし、紹介する。
Untaptは次の3つの部分からなる。求職者データベース、求人データベース、それらの間を取り持つエンジンだ。エンジンは求人情報を掲載し、求職者と結び付けるとともに、全過程を管理する。

--もし求職者A氏がUntaptに登録したら、人間の手を全く介さず、ロボットが「あなたはX社のこの職に適しています」と言うのですか?

そのとおりだ。応募する側の特質と、採用する側のニーズをくみ取り、全ては自動的にマッチングされる。我々のマッチング・アルゴリズムは金融業界の採用に関して最適化されている。A氏には求人掲示板のように何百もの情報が与えられるわけではない。A氏に非常に適しており、A氏が次に就きたいと思うような職をいくつか紹介する。

--金融業界がテック系人材を求めるのは何故ですか?

金融業界はヘッジファンドやスタートアップ企業など、テクノロジー業界への最大の支出者であり、テクノロジストの最大の雇用者だ。金融サービス企業は大きな課題に直面している。一つ目は、様々な規制への対応。適切なチェック・アンド・バランス機能を維持するためには新たなシステム構築が必要だ。次に、金融サービスのデジタル化。モバイル等の多様なプラットフォームへの迅速な対応が求められている。また、現状の大手金融機関はレガシーなシステムに依存しており、それらを急速にアップグレードしていく必要がある。

--テック系の人材採用は何故そんなに難しいのですか? 特に金融サービスにおいてそうなのでしょうか?

グーグルやフェイスブックで働くことがどのようなものか、エンジニアは皆知っているが、金融テクノロジーの世界で何が起こっているのかを理解する人はあまり居ない。弊社の取り組みは、Untapt(untapped)-利用されていない、という社名に表されている。
問題解決の事例を紹介し、金融サービスの領域外から新鮮な人材を招き入れることが使命だ。企業の採用担当者には、彼らがどのような人材を求めているかを説明する短いムービーを撮影してもらい、その動画を我々のプラットフォームに掲載している。

世界には推定で1,600万人のエンジニアがいる。採用担当者がもっと広い視野で考える気になれば、採用候補となる人材は豊富だ。

--テック系の領域からの採用を考えている金融サービス企業に助言をいただきたい。

応募してくる志望者には素早く対応し、面接や採用の日程を短期間で調整する。また、給与・報酬はわかりやすくすること。また、従業員の転居費用の負担も大きな効果がある。テック系の分野では、我々は人材を全世界から連れてくる。企業がビザの取得を支援できるならば、さらに大きな効果があるだろう。

--最後に、金融分野への転職を考えているテック系人材に助言をお願いしたい。

グーグルのようなIT企業に限らず、破壊的イノベーションは金融サービスの分野でも起こっている。金融業界ではスケールの大きな仕事が至るところにある。例えば1日10億ドルの取引の処理能力問題を変革し、簡素化するような仕事。これらは非常に重要であり、やりがいのある仕事だ。テクノロジーがモノを言う場面が非常に多い。

文=サマンサ・シャーフ(Forbes)/ 編集=上田裕資

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